毎年、七夕頃に高校の同窓会を開いている。
このくらいの年になると、昔の友人と群れたくなるのか、年々盛り上がっているような気がする。
150人位の学年だったと思うが、この学年の集まりを楽しみに、毎年、全国から60人くらいがウキウキと集まってくる。
寮で寝起きを共にし、悪さをし、多感な青春時代を過ごした仲間というものは、大人になってからの友人とどこか違うらしい。
普段は隠しておきたい、ヤドカリの尻尾みたいな弱い部分も、全て曝け出して付き合える安心感がある。
男子が多い学校だったので、女子はごく僅か。
だから女子同士はさらに連帯感も強く、今も姉妹のごとく仲がいい。
これも毎年、アメリカに住んでる仲間の里帰りに合わせて集まっている。
夏にこれらの集まりが集中するから、花火大会も含めて、楽しい会が続く。
卒業してから30年も経つと言うのに、話題は授業の内容だったり、先生の癖だったり、仲間の失敗談だったりで、昔の記憶はいつまで経っても色褪せない。
部屋は、何人部屋だったのか、皆で議論しても結論が出なかったりするけど、着ていた服の色ははっきり覚えていたりする。
1年間一緒の部屋で生活した人とは、家族であり、親しみは深い。
卒業後、ずっとご無沙汰だった元・家族と偶然再会して、今年はいつもの仲間の集まりに3人が新たに加わった。
2オクターブ高い歓声と共に、3人はハグで歓迎され、話の尽きることは無く、笑いジワは大いに増えたのだった。
結婚している人も、していない人もいる。
孫が生まれた人もいれば、まだ小学生の子供がいる人もいる。
だいたいの子供は、あの頃の私たちより大きくなってしまった。
母親にくっついて同席した娘さんには、当時の仲間の面影があり懐かしい。
ママの学生時代のエピソードを聞かされて楽しそうだ。
当時は私たちも子供だったから、先生の偉大さも優秀さも理解しきれていなかった。
なんて勿体無い事をしてたのだろう。
もっと真面目に授業を聞いておけば良かったよねぇ。
スゴイ高度な授業を、高校生ごときにしてくれていたよねぇ。
私はあの先生が教えてくれたから、因数分解がわかったンだょ。
地理の先生は、毎日、大量のプリントを配ってたよね。
昨日のコトのように、当時の話題が溢れてくる。
アンタは凄かったよねぇ、試験で分からなくても、髪の毛、引っ張ると答えを思い出すって言ってたじゃない?アタシなんか、いくら引っ張ったってぇ、ぬああ〜んにも出てきやしなかったよぉ。
夜の消灯前の点呼、当番で室長が廻ってくる時に、アンタ達は、「点呼、点呼〜♪」って変な格好で踊りながら廻ってたよね〜。
大食堂での夕食に、クラブ活動で遅くなって、駆けつけても遅刻することもある。
遅刻した者は、入り口ドア付近に5分間立って反省しなくてはならなかった。
アレ、辛かったょねぇ。お腹すいちゃってて、ヘトヘトで。
厳しい勉強、寮生活、クラブ活動、恋愛。
少女たちの青春には、それなりの苦労もあったのだ。
「今、ナニやってンの?」
よく発せられるセリフだけれど、一言で簡単に答えられる人ばかりとは限らない。
こないだまでは、コレをやってたけど、こういう考えで今度はこの学校へ行って勉強しなおし、今はコレをやってます。
高校を卒業したらすぐに大学へ進む人がほとんどだけれど、集まった仲間の数人は、大分経ってから二度目・三度目の進学をして大学院にも行っている。
年齢に関係なく、夢と希望を持って今も勉強し続けている人もいる。
大学に行かなくても、海外で暮らし、外国語に長けている人もいる。
海外で活躍している同窓生も、たくさんいる。
子供時代に、上下左右、他人の中で生活したお陰か、みんな心身ともに逞しい。
自分の人生を考える習慣も、当たり前に身についている。
ナニをしたいか、ナニをすべきか?
だから最終学歴とかっていう世間一般の常識って、ナンなんだ?と、思っちゃうのだ。
死ぬまで、人生って開発途上じゃあないのだろ〜か?
簡単に履歴をお書き下さいと言われたことがある。
何年に卒業、何年に結婚。
私の半生って、たったコレだけだったのかい!?
子供だった私たちに、理解できないまでも理想の教育をしてくれた先生たち。
「大地を3センチでも動かせる人になれ。」
母校の創設者は、そう言っていた。
教育って、30年・50年先の次の世代を作る大切な仕事なんだなぁ。
立派なおばさんになってる友人を見て、そう思った。
私が死んであの世に行った時、恩師に会ったら先生は褒めてくれるのだろうか?
まりちゃん、よくやった!
そう言って貰えるだけのコトを、はたしてあと数十年でやり遂げられるンだろうか?
「ほら、マリンちゃん、お鼻が出てるよ。ちゃんと拭こうね〜。」
「あれぇ、ディプシー、またここで待ってたの?撫でて〜なの?よしよし良いコ良いコ。」
「タイラー、またヨダレがぶらぶらしてるよぉ。」
犬猫動物園の園長先生が、今の私の職業なのだった。