Vol.84

アレちゃん オペッ!

保健所から出されたアレックスは、避妊手術することがお約束だ。
我が家の動物たちは、みんな避妊・去勢手術済みなので、異議は無い。
しかし避妊・去勢手術については、賛否両論あるみたいだ。

血統書付きだから一度は子供を産ませてみたいとか、健康な体にメスを入れるのは不自然で可哀想だとか、そんな意見もよく聞くし、分からないでもない。

だけど、年に二度は来る恋の季節に、魅力的な匂いを発する異性に近づく事を許されないストレスの方が自然じゃないし、可哀想なのだ。

だからと言って、自然に任せて自由恋愛させていたら、大型犬は一度に10頭近くも産まれて、全てのコを飼いきれなくなるのは必至。

生まれるコが全て健康とも限らない。
先天性の疾患だってあるし、育児中の事故で母犬が踏んだり、舐めてやっているうちに誤って咬んでしまうことだってある。
素人がよく調べずに交配させたら、遺伝性疾患が出るコトだってあるだろう。

買い手、貰い手がみつからなければ、保健所行きとなって、せっかく生まれた命を絶つことになってしまう。
生まれたすべてのコの行く先が決まっているか、自分で飼える自信が無い限り、交配はさせないくらいの覚悟が必要なのではないだろうか。
人間が動物を飼う以上、バースコントロールは飼い主の責任なのだ。

デメリットは避妊・去勢手術をすると、太る傾向があるというコト。
手術中の全身麻酔も絶対安全とは言い切れないだろう。

メリットは、数ある特有の病気が防げるということ。
気のせいか、ずっと子供っぽいままでいられるみたい。
オスの気の強さも弱まるようだ。

愛する家族の健康と長生きを願うなら、避妊・去勢手術はメリットが大きいコトだと思うのだ。

アレックスは下痢P〜がなかなか治らなかったので、二度目のワクチン接種が遅れた。
ワクチン接種後1ヶ月してから手術なので、先週やっと避妊手術をするコトができた。

アレックス育てに追われて雪山に行きそびれ、今年はスノボーに縁が無い私。
まだまだ冬なんじゃい!と思ってたが、アレックスには春が来たらしく、抜け毛がスゴイ。

摘めば摘むだけ、ブラシを掛ければ掛けるだけ、いっくらでもボソボソ抜ける。
縦に横に徹底的にブラッシングしまくって、お痩せなアレちゃん、さらにスリムになったみたい。
いつもは3頭まとめてお風呂に入れるのだが、今回はお手軽にアレックスだけ綺麗にした。

手術予約日、また膀胱炎をぶりかえした猫のディプシーも一緒に乗せ、ピーピーにゃあにゃあ大騒ぎの車で獣医さんへ。
ディプシーの診察を済ませて預け、アレちゃんと手術時間まで近くの海岸を散歩してくる。

初めての場所での散歩だけど、アレックスはいつもと同じ、あひゃあひゃしながらご機嫌だ。
初対面の犬とも上手に挨拶、遊んでもらって大満足。

お腹が空いた私は浜辺に座り、途中で買ったサンドイッチをピクニック気分で食べ始める。
アレックスは手術前の絶食だからあげないよ〜って、話しながら食べてると、パンを持ってた左手に突然、強い衝撃がっ!

びっくりして思わずキャッ!と叫んだら、トンビが私のサンドイッチをかっさらって飛んでった。
アレックスもワンワン言いながらひったくり現行犯を追っかけてくれたけど、空は飛べないから取り返せなかった〜。
くやちいィ〜。美味しいタマゴサンド、まだ半分も残ってたのにィ。

病院に戻り、散歩充分、心地よい疲れで麻酔無しでも寝ちゃいそうなアレックスを抑えつけ、注射を打ってもらう。
とろとろと眠くなった頃、よっこらしょっと21キロを抱き上げて手術台へ。

12月にウチに来たときには11キロだったから、<3ヶ月で2倍>の体重になった。
あとどれくらい大きくなるつもりなのだろう。
銀行金利もこれくらいだと、アリガタイ。

手術帽とマスクを貸して貰い、気分はERのドクター(カァ〜ッコいい〜!)に変身する。
図々しい飼い主は手術に立ち会うことにしたのだ。
ナッシュの去勢手術の時にも立ち会っちゃった。
オスの去勢は、タマタマを取るので、比較的、楽な手術。
でもメスの避妊は、子宮と卵巣を取るので開腹手術でちょっとメンドクサイ。

「気分が悪くなるかもしれませんよ〜。蒼ざめちゃう人いますから。」

ダメだったらイチ抜けた〜って、居なくなろう・・・って思ったけど、興味の方が勝った私。
料理みたいなモンだし!?魚を捌くのと大差ない!?
優秀なベテランかじやら主婦は、最後までしっか!と見届けることができたのだァ〜。

笑気麻酔のマスクを支えたり、ヨダレを確認したり、呼吸を見たり、心拍数をチェックしたり。
ちょっとしたナンチャッテ見習い看護オバサンだ。
「これもかじやらネタですねえ。」
獣医さんには、見抜かれていた。

手術したおかげで、腹膜の癒着がみつかった。
シェパは胸が深いから背骨近くの子宮を引っ張り出すのが大変だし、おまけに子宮も癒着気味だったから獣医さんは大変だったみたい。
しっかし図で見る子宮と実物は、形がずいぶん違うンだあ。へぇ、そこに仔犬が並んで入るの?おベンキョになりやした。え、今度、帝王切開も見せてくれンの〜?

当日はさすがにショックだったのか、「ご飯イラナイ・・・。」と寝込んだアレちゃん。
翌日からメキメキ回復し、食欲も挽回。
翌々日はすっかり元どおり、お調子者のオテンバちゃんに復活だぁ〜。

これで抜糸が済めば、さっぱりするよぉ。
そしたら、ちゃんとした躾け訓練、始めよっか?

「いつ頃、アレックスのその悪戯は収まるのぉ〜?」
友人たちが、異口同音に発する質問だ。

<シェパードは警察犬だからお利口さん!>っていう、社会一般の思い込みに応える為にも、やっぱ、がんばンなくっちゃね〜っ!