Vol.78

モッタイナイ その2

イングリッシュ・セッターのタイラーは、何か口に咥えているとシアワセらしい。
テニスボールがちょうどいい大きさの口らしく、たっぷりヨダレを滲みこませ、何時間でも口に咥えて持ち歩いてる。
寝るときも咥えたまま寝てしまい、どうしようもなくアホな顔だが、本犬は、とっても満足らしい。

そんなタイラーが気に入った物が、500mlのペットボトル。
リサイクルしようと、洗って、皮剥いて!?乾かしておいたら、大喜びで咥えて逃げてった。
それから3時間、齧るとコリコリパリパリ、音が楽しいらしく、ずっと抱えて遊んでる。
ミュージシャンなタイラーは、トイレへ行くにもそのペットボトル持参で行き、暇さえあれば・・・ってずっと暇だけど、その音楽を奏でてる。

透明なペットボトルを咥えるタイラーの口の中は丸見えで、その大口あけて幸せな顔は犬とは思えない不思議な生物だが、リサイクル運動推進派であることは、間違いなさそうだ。

そんな熱心なリサイクラーが、究極のリサイクルを思いついた!
なんと自分のう○ちを食べたのだ。
ダイエットがよっぽど過酷だったのか、飢えたタイラーの考えたリサイクルは、すぐに却下され阻止された。
それだけは、お願いだから止めて欲しい。

犬猫の保護センターにシェパードの母子数匹が入れられたそうだ。
保護団体の方々が引き出して、引き取り家庭を募集していた。
ウチみたいな多頭飼育の家じゃ、断られるだろ〜な〜と思いながらもメールしてみる。

今6才のシェパードのナッシュが我が家に来たのは、彼が4才の時。
それでもこんなに懐いてくれて、今じゃ心の奥底で繋がってる深ぁ〜い友情を感じられるほど。
ナッシュの方も、ボクは一番愛されてるから・・・と安心していて、他の動物を可愛がっていても静かに見守ってくれている。

こんなに賢くて可愛くて魅力的なシェパードを、仔犬から飼って見たいねと常々家族で話してた。
でも仔犬のシェパードなんてそうやたらに道に落ちてるモンじゃなし、買うのはイヤなへそ曲がりな私には、仔犬のシェパは夢のまた夢だった。

だから仔犬のシェパが捨てられてたなんて、アンビリ〜バボォ!
私にとっては願っても無いチャンス!?
年末ジャンボは、当たらなくても諦めるから、ど〜か我が家に一匹の仔犬ちゃんを!

クリスマスを前にして、そんな望みが叶えられた!?
保護団体からメールの返事が届き、我が家に幸運が与えられたのだ。
そして一昨日、念願の仔犬ちゃんが我が家に預けられた。
1週間から10日程、トライアル期間ということで、先住動物たちとの相性などをみることになる。

ナッシュってヤツは優しいンだか、厳しいンだか、自分が一番偉いと信じて疑わないから、たとえメスだろ〜が仔犬だろ〜が、誰が来ようとその順位を押し付ける。
ま、犬の中じゃ一番の古株だから、それも許される。
タイラーは、誰でもまずはお友達〜♪の、平和主義。

そんな我が家の犬社会に入る仔犬ちゃんは、推定4〜5ヶ月のジャーマン・シェパードのメス。
まだお子ちゃまで、ナッシュと同じ姿・形なのに、体は小さくて可愛い〜。
耳がまだ片方タレ気味で、なんとも言えず情けなくて可愛い〜。
体は小さいのに、前足は大型犬のデカさで可愛い〜。

毛が多くて長いため、見た目はそんなに分からないが、触ってびっくり!涙が出てしまった。
骨と皮に痩せているのである。
骨格標本みたいに、骨がゴツゴツ触れるその幼い体で、この先、ちゃんと生きていかれるのか不安になる。

せっかく助かった命だもの、大事に育てて丈夫にしなくちゃ。
お腹が弱いシェパードだから、太らせるのが難しいなぁ。
タイラーは、1日5回食べれば太ったから、楽だったンだけどなぁ。

ケージに入れて先住犬達と差別で順位付けを示しながら、少しずつ先輩犬と慣らしていく。
仔犬ちゃんは、先輩犬たちがすることを興味津々で見て、真似するのが楽しそうだ。
この調子なら、ほっといてもいろんな事をどんどん覚えていくから、人間がいちいち教えなくてもすみそうだ。

ナッシュは、このちっこいコが後をついてくるのがうっとうしいらしく、迷惑そうに逃げている。
でも楽しく咥えてきたおもちゃを、わざとポトッと落として、仔犬ちゃんに譲ってやったりもする。
露骨に正面から寄ってこられると、鼻にシワを寄せて唸って追い払う。
ナッシュに怒られると、仔犬ちゃんはサッと引いて、しばらくナッシュから離れて反省してる。

タイラーも始めはうっとうしかったらしく、ゥゥ・・と小さく唸ったりしていた。
ところが猫に怒られた仔犬ちゃんを見て、可哀想に思ったらしい。
いつもは自分が猫に怒られてるばかりだから、その気持ちがよ〜く分かるらしい。

そっから仔犬ちゃんの世話係に立候補し、優しいお兄さん犬となったタイラー。
自分の後をついてくることにも、なんの抵抗も示さなくなった。
そればかりか、ナッシュが不機嫌そうに仔犬ちゃんのそばにいる時には、間に体を入れて仔犬ちゃんを守り、ゥゥ・・とナッシュに文句を言ってやったのだ。

仔犬ちゃんとタオルの引張りっこをして遊んでやったり、階段の上り下りができなくてピーピー鳴く仔犬ちゃんのそばに行ってお手本を見せてやったり、常に一緒で面倒を見てる。

仔犬ちゃんは、この変な犬・タイラーを師と崇めてストーカーすることに決め、タイラーの動きをひたすら追っている。
タイラーは、すでに私の熱心なストーカーだ。
だから私には、金魚のフン状態のストーカー犬が、今ならもれなく2匹付いてくることとなった。
ラッキ〜♪

私と同じ干支の申年生まれの仔犬ちゃん、すでにタイラーと同じ体高・体長だ。
体積・体重だけは負けたくないタイラー、仔犬ちゃんの倍はキープしてる。

こうして新入りの仔犬ちゃんを迎え、タイラーは少し評価が上がって係長に昇格した。
でも上司のナッシュには頭が上がらず、新入りには頼られるし、中間管理職は辛いのだ。
ナッシュは、本部長になり、ますます一家をまとめていく所存のご様子。
たった3匹の会社組織。
猫は沢山いても、別会社だからね〜。

捨てられて殺されるトコだったモッタイナイ仔犬ちゃんは救われて、欲しかった我が家でうまくリサイクルできたってコトで、万々歳〜!
この調子で、放置自転車とか、粗大ゴミとか、どんどんリサイクルされていくといいね〜!
モッタイナイもんねっ!