Vol.65

犬の言い分・猫の考え

人間って、不自然な動物だと思う。
着ている服や、装飾品、持ってるモノの値段がその人を判断する材料になっている。
だから少しでも自分の価値を高く見せようと、年頃の若者はそんなミテクレに情熱を注ぐワケ。

学歴、職業、収入、化粧に美容整形、見栄やハッタリ、ホラを吹いたり大風呂敷を広げて、実際以上に良く見せたがったりもする。
繁殖期の派手な鳥みたい〜♪

目が二重だとか、無駄毛がないとか、眉毛の形を整えてるとか、乗ってる車がカッコいいとか、髪の色が流行のカラーだとか、高価なブランド品を身にまとっているとか、グルメな店に詳しいだとか、芸能界に知り合いがいるとか・・・。

もし天地を揺るがす大災害が起きて、家も会社も学校もお金も装飾品も、今まで価値があると信じ、惑わされてきたモノが、なあ〜〜んにも無くなっちゃったとしたら・・・?
動物としての本質が露呈され、生きる力や内面の魅力だけで判断されるンだろ〜なぁ〜。
ガルゥ〜〜ッ!

こんな現代の私たちが飼ってる犬や猫だって、もはや人間が餌を与え怪我や病気から守ってやらなきゃ、生きていかれなくなってしまってる。
野良クンたちの平均寿命は3年くらいなンだそうだ。

まして人間が作り上げた血統書付きの高価なペット達は、なんだか見るからに弱々しい。
野生で生きてく逞しさや勘なんて、当の昔に忘れ去ってしまってるンだろう。
それでも、相手の実力を見抜く力は、犬や猫は、みんなちゃ〜んと持っている。

血統書や美容院、着てる洋服や首輪のブランドなんて、関係ないンだね〜♪

「この群れに入れてもらえば、餌を分けて貰えるかも?
取りあえず尻尾振りまくって、愛想良くゥ〜♪
よろしくゥ、よろしくゥ、ボクをよろしくゥ〜!。」

「わぁ、いいなぁ!そのおもちゃ。
ちょっとだけ、ねぇちょぉ〜っとだけボクにも貸してちょ〜だ〜い♪
え〜?ダメなのォ〜?どおォ〜してっ!?ねぇ、ねぇ、いいじゃん、いいじゃん〜〜。」

ナッシュに対するタイラーは、はじめはこんな調子だった。
でも群れに慣れてきたら、だんだんに地が出てきてどっちが上位なのか、はっきりさせなきゃ気が済まなくなってきたらしい。

「先に外へ出るのは、オレだぞぉ〜!
タイラーずるい、先に出るな!ギャウギャウ、ウワンウワン!!」
一昨日のナッシュの言い分は、こうだった。

「うるせ〜、いいじゃんか、少しでも早く散歩に出たいンだよォ、文句あっか!?ウ〜!」
と言い返したタイラー。

「あ!おめ〜、オレより小さくて、あとから群れに入ったクセにナマイキ、許さねぇ〜っ、ガウガウガウッ!」
そして取っ組み合いの大喧嘩。
またまたタイラー負傷。
獣医さんに連れて行かれ、ゲージに入ってる負傷カラスにセットしている間に、ホチキスでパックリ割れた額を縫われた。

なんで愚かな闘いを繰り返すンかなぁ〜?
それでいつも怪我するのは、タイラーの方なのに。
さすがのタイラーも、まる二日間は、しょんぼりと落ち込んで寝込んでた。

そお〜〜っと偵察にきて、そのしょんぼりを見つけた猫のポー。
他の猫たちに知らせに行く。
他の猫たちも、次々ぞろぞろと覗きにやって来る。

「ホントだ!あいつ、今日は、やる気ないぞ!!
もっと近くで遊んでみようぜィ〜♪」

そもそも猫の方が、犬より気が強い。
ナッシュもタイラーも、何度そのでっかい鼻に血の滲む引っかき傷を貰ったことか。

こないだも、ついうっかり、好奇心から猫トイレに攻め入ったタイラー。
猫3匹に囲まれ、猫パンチの雨に合って泣きべそかかされた。
キャィ〜ン!キャィ〜ン!!と降参の叫びに、あわてて救出に向かうこと既に3回。
小粒な女の子・ラーラとの一騎打ちでさえ、敵わないタイラーだ。
「アタチに盾突く気なのォ〜!?負けないわよォ〜」

タイラーが我が家に来てからというもの、猫たちは厳戒態勢でその遊び場を譲っていた。
今回は、テリトリー奪還の絶好のチャンス!
うっかり臥せっていたタイラー、すでにその実力も見透かされ、すっかり舐められまくってる。

こりゃマズイ!と起きだしてポーにセットし、やる気だけは見せたつもりのホチキス頭・タイラーだけど、ポーは悠然と一言鳴いて立ち去った。

「あっほ〜ぉ」
そりゃごもっとも!仰るとお〜りっ♪