Vol.59

合宿(前編)

雪山遊びシーズン真っ只中の今なのに、風が良いとかで南の島へ行く事になってしまった。
それもイイトシをしたオジサン・オバサンばかり10人の、ウィンドサーフィン合宿@サイパンだ!

雪の国から、いきなり椰子の国へ。
膝でファスナーを開けるとハーパンになるパンツや、半そでTシャツに長袖Tシャツ、その上にフリースを着てさらにコートを着込んで、気分はラッキョで成田へ向かう。

アンビリーバボーな大量の荷物。
車の中はもちろん、キャリアってこんなに乗るのかとオドロキの物体が早朝の高速を走る。
「今朝、スゴイもん、見ちゃったよォ〜!」
と、あちこちで噂になってるに違いない。

いくつもの大きなバッグに詰め込まれた道具類の多さに、空港職員の方々も呆れて笑ってる。
箸より重いこういう荷物を運んでるっから、私たちも当たり前にマッチョになってくる。

「すごい荷物ですね〜!何かあるンですか?」
「はぁ、大会があるモンで・・・」
誰も私が出るとはァ言ってない。

大荷物の超過料金は、航空会社によって規定が違うので、金額にかなりの差があるそうだ。
窓口の担当者しだいで、かなり違うという説もある。
いわゆる高級なお寿司やさんで言う「時価」ってコトらしい。

今回は、航空会社がハズレだったのか、担当者が出がけに奥さんと喧嘩でもしてご機嫌が悪かったのか、熱意ある交渉も空しく、今まで聞いたことも無い程のかなり高い料金を請求されてしまったのだった。
たぶんもう次回からは、このアメリカの某・航空会社を使うことはなくなるンだろう。

荷物の重量や大きさで金額を決めて厳しく言うのなら、人間にだって料金に種類があってもいいのではないかと思うのは、小さい人間の私だからこその意見かな?
私の倍の体重の人って、けっこう当たり前にいそうだから、私を半額にして欲しいンだもん〜。

この時期、ビーフorチキンが究極の選択となる機内食をすべて平らげ、ウトウトしてると、もう南の島に到着〜!
時差は1時間なので、体にはとっても楽な海外だ。

機体から一歩踏み出すと、むう〜っとする湿気と暑さ。
「ちょっとォ〜、暖房強すぎるンじゃなぁ〜い?」
入国審査に向かって歩きながら、ラッキョは一枚づつ皮を脱いでいく。

優雅にゴルフバッグを抱えたオジサマたちの間を縫って、次々と運び出す大荷物。
迎えに来てくれたトラックに積み上げられたその山は、ここでも周囲の呆れと注目を掻き集める。

宿泊は、繁華街で有名なガラパン地区のりっぱなホテル。でも食事無しなので、とっても安い。
そしてステキなことに、オーシャンビュ〜♪
ホテルと浜を往復するだけのスポコン合宿には、もってこいの場所だ。

ただこの地域で街を歩くと、そこらじゅうのお店のお姉さんたちが寄って来て声を掛けてくる。
「お兄さん、マッサージどお?真面目なマッサージよお。お姉さんも一緒にどお?」
怪しげなコト、このうえない。

すぐに大荷物の荷解きに掛かる。

海岸に道具を置かせてくれるトコがあるので、ある程度組み立ててすぐ使えるように準備しておく。
ところが、海はすごく良い風。
みんな浮き足立ってて、とにかく今日使う分だけ作って海へ出ようということに。

夕方のこんな時間のせいか、他に出る人も無く、海は貸切。
絵のように美しい、ステキな光景だ!

でも実際は結構な風で、私なんぞはお呼びでない。
今日は無理しないで、明日からに備えよう〜。

そして翌朝から、お決まりのココナツ亭という食堂で5ドルの朝食セットを食べ、浜に入り浸る生活が始まったのだ。

何が楽しいンだろ〜ね、ウィンドサーフィンって。
儚い虫の羽のようなセイルにへばり付いて、海に漂い、マニャガハ島へ向かって同じトコを行ったり来たり。
フト思ってみると、変な遊びなのである。

ここサイパンでも1ヶ月ぶりにやっと吹いたというその有難い風は、私には強すぎ、昇格させて貰ったボードとセイルは思うようにコントロールできない。
やっと乗れたと思っても、ただ風と潮に流されるだけ。
悔しいィ〜!これじゃ、なぁんにも楽しくなァい〜!!
ず〜っと波打ち際をジタバタ漂っているだけなのだったァ。

ホントに大会があるとかで、参加するらしいプロの人たちがやって来て、じつに上手に、まったくラク〜に、乗っている。
めちゃめちゃカッコイイ。
なあんだ、あんなに簡単に、ジャイブってできるンじゃん!?
その人たちの乗ってるラインは高速道路で、ターンしてもスピードがま〜ったく落ちない。

それとは別のラインで、一般の上手な人が乗っている。
その人たちだってとっても上手で、楽しそうに走ってるけど、沈することもある一般道。
その沈の仕方がとっても派手。
一本背負いや、捻り前方宙返りなど、さまざまなパフォーマンスが見られる。

そして波打ち際近くには、よちよち歩きの初心者がジタバタ漂っているのであった。
私は今もってここに属している。

- つづく