Vol.55

鎌倉野菜

最近の私のお気に入り。
それが、「鎌倉市農協即売所」だ。

鎌倉駅東口を出て、若宮大路を右へ少し行った左側。
JRのガードの手前、Patagoniaの隣にある。ここは昭和3年、鎌倉の農家の人々が農作物を直売するため作られたとか。
なんと70年もここで開かれている市場なのだそうだ。

横浜の下町で育った私、子供の頃の日々の買い物と言えば日用品市場。
買い物かごをぶらさげた母に、手を引かれて行っていた。

魚屋のおじさん、八百屋のおばさん、お肉屋のおじさん、みんな顔見知りだった。
天井からゴムで吊り下げられたカゴの中には、たっくさんのお金がじゃらじゃら入っていて、おじさんは、すっごいお金持ちなんだと憧れていた。裸電球の灯る下、いつもアッタカイ会話がそこにはあった。
食べ方を教えてくれる。
旬を教えてくれる。
おまけもしてくれる。
子供の成長も楽しんでくれる。
くれるものがいっぱ〜いあった。今ではそういう市場は、すっかり寂れ、大型スーパーでは会話をしなくてもバーコードでピッピッと計算でき、黙ってお金を差し出すのが当たり前になってしまった。
レジの店員さんはエンドレスのテープのように、同じ言葉を繰り返し、人形のようにポーズをとってお辞儀をするけれど、毎日通ってても顔を覚えてはくれないし、オマケもしてはくれないだろう。
応対はとっても丁寧なンだけど、レジで調理法を聞いたら大迷惑になっちゃうよねぇ。

そんな平成のこの時代、タイムスリップしちゃったかと思えるようなこの市場。
この鎌倉野菜直売所は、生産者である農家の方々とのアッタカ〜イ会話で溢れていたのだった!板の上に、採りたての野菜を並べ、売っているのは、紛れも無くそれらを作ったお方たち。
野菜の名前から調理方法、味、なんでも聞いちゃう私もずうずうしいけれど、嫌な顔一つせず、そのいちいちに丁寧に答えてくださる生産者の皆さん。

鎌倉ブランドの野菜だから、すぐご近所で作っている物。
だから新鮮さは、とォ〜んでもなく良い。

長ネギなんか、みんな葉っぱの先っぽまでピン!と立っている。
大根はチクチクするほどの葉っぱ付きが当たり前、珍しいニンジンのフサフサの葉っぱ付きだってあるンだから。
こんなフレッシュ野菜は、スーパーじゃァなかなかお目に掛かれない。
それに大きくて安い!ときているのだ。昔ながらの手作り沢庵が並んでる。
店番しながら皮を剥いてくれた里芋も置いてある。
形が悪かったり、割れてしまったニンジンなんてのもあるけれど、それはそれで愛嬌があってとっても可愛いし、そういう野菜はすんごく安くなってたりする。
そういうのも見つけると、なんだか嬉しい。

そのかわりキャベツ半分とか大根4分の1なんて、甘っちょろいのは、無い。
白菜だってまるごとそのまんま。
でっかくて、新鮮で、安い!それがここの売りだから。

一般的なスーパーで置かれている野菜以外の、見たこと無い野菜もここにはある。
ニンジンは、赤い物と思ってたら、おォ〜間違い。
ここには黄色いニンジンから白いニンジンまであるンだぞ〜。

何回聞いても覚えられず、ついにくるんで貰った新聞紙に書き留めたプンタレラ。
これは生でサラダにするらしい。
中心の芽のようなところを裂いて食べるのだそうだ。
とっても丁寧に教えてくれたここのおばさん、200円のところを150円にオマケしてくれて、その上、後ろの灯油ストーブの上で焼いていた焼き芋を2本も「おやつに食べて」と、くれたのだ!
そんなにしてくれたら、商売になってないと思うンだけど。

この頂いたあっちっちィの焼き芋は、白サツマイモと黄色いサツマイモ。
中が白いのはとっても水分が多くて、まるでスイートポテトを食べてるみたいに美味しかった。
犬のナッシュにもその皮をあげてみたら、もうすっかり焼き芋の虜になってそばから離れなくなってしまった。
今度はちゃんと買ってこよう〜。

中華料理の炒め物にと教えてもらったタァツァイ。
これはお勧めどおり美味しい。
また見つけたら買っちゃおう。

辛味大根の赤い大根と、わさび風味の緑の大根、もちろんりっぱな葉っぱ付き。
下ろしてみたら、なんて見事な緑と薄紫!
ナニそれっ!?と家族のオドロキがまた楽しい。
そして試食。
辛いものに弱い私、お箸の先でちょっぴし舐めてみたら、ピェ〜ピェ〜騒いじゃうほどとんでもなく辛ァ〜い!
下ろして2〜3分後位が辛さのピークだとか。
辛いもの好きには、たまンないかもね。

他にも、すんごく良質の野菜がたっくさん!
これほど新鮮で安い野菜が楽しく買えて、その日のウチに食べられるなんて、これってとんでもなく贅沢なことではないかしら〜ン♪
きっと大地の栄養もたっぷり、体にもいいよね。
地元で採れた野菜を地元でいただく。
これこそ、ごく自然なことだけどとっても有難くって、なんだか幸せが身に沁み入る食卓になったのでした。