歯医者さんへ定期健診に行った。
親不知は、4本中、3本まではもう抜いた。
あと1本あるンだけど、まだ生えてきていない、と思ってた。
ところが、前回、レントゲンを撮って見たら、これは生えてきていないのではなく、歯茎の中で横に寝て生えていたのだ。
さすが私の親不知。
親に知られないどころか、本人にも見つからないトコに埋もれて寝コケていたのだった!
今回の検診で、針みたいなのを使って歯茎と歯の間のポケットの深さを測ってくれたら、この半年でとっても深くなっちゃってた。
ぐうたらで寝ているだけの親不知が、隣の奥歯の根っこを栄養にして吸収しちゃってるのだそうだ。
日々の咀嚼に参加もせず、ただ歯茎被って寝ているだけの親不知が、大事な奥歯の根っこを吸収するとは、ぬぁ〜んてこった!
「これはもう抜いた方がいいですねぇ〜」
このまま放っておくと、毎食、酷使している大切な奥歯のほうが心配だ。
でも今回の抜歯は、そんじょそこらの親不知の抜歯とはちょっとワケが違う。
歯茎の中に完全にその姿を隠し、顎の骨の中で横になって生えている相当なワルなのである。
「1週間〜10日位は、腫れたり痛んだりしますので、会食などの予定のない日を選んで予約入れて下さいネ。」
年末の主婦は何かと気忙しい。
大掃除しなくちゃだし、年賀状書かなくちゃだし、美容院にも行かなくちゃだし、そりゃ〜かじやら主婦だって、なんやかやと、ほらねぇ〜?
それに12月にはクリスマスはあるし、お正月のご馳走が食べられなくちゃいけないしィ。
しかし、この試練から逃れるワケには行かない。
コブシを握り締めて意を決し、準備万端整えた。
家族に「あとは全て任せた、よろしく頼む」と言い残し、勇気を振り絞って歯医者さんのイスに座ったのだ。
もちろんその日を迎える数日前から思う存分に食いだめをして、体力・体重?をつけたことは言うまでも無い。
イスに座るやいなや、鼻に吸入の器具が付けられた。
オプションで頼んでおいた笑気麻酔らしい。
「恐がりですか?笑気麻酔しましょうか?」
そんなに恐がりとも思わなかったが、話を聞けば、かなりジェイソンな手術らしいので、せっかくのお誘いだし、何事も経験〜♪と事前にお願いしておいたのだ。
ふ〜ん、なんの匂いも味もしないし、こんなの吸ってもなんともないンじゃな〜い?
ホントに効くのかな?へらへらしちゃうのかな?あはは〜。
とりあえず、深〜く吸い込んでっと。。。
あれ?
なんだか、ほんわか。
あれれ?
酔っ払ったみたいな感じが。
あれれれ?へへへぇ〜
昼間っからいいの?こんなに酔っ払っちゃってぇ〜♪あとでちゃんと帰れるかなぁ。えへへぇ〜。
先生がそばに来て、口を開ける頃には、もうすっかり泥酔状態で良〜い気持ちの患者の出来上がり〜♪
「ちょっと心臓がドキドキしますよォ」
先生の言葉ははっきり理解できる。頭のどこかはクリアーみたいだ。
お酒に酔ったのとはちょっと違う感じ。
目をつぶって口の中をいじられていると、どっかよその世界のことのようでぜ〜んぜん平気。
その頃、心臓は「ここにいるぞォ〜!」と叫びながら、バコンバコンと大騒ぎで暴れ始めていた。
頑張れ、私の心臓〜!壊れるなよォ〜!!
良〜い気持ちで口を開け続け、ノミでコンコンコンと顎の骨を削られ続けてもぜぇ〜んぜん平気。
いいよォ〜お、どぉ〜んどんやっちゃってぇ〜。へへへ〜。
このまんま、ぜ〜んぶの歯を抜かれちゃっても、ま、いっかなぁ〜?
「まだだなぁ、もっとだなぁ」
コンコンコン、コンコンコン。
頭蓋骨の内側にノミの音が大音量で響くけど、ずぇ〜んぜん平気。
あんまり平気でいるモンだから、ときどき心配されて名前を呼ばれる。
「だいじょうぶですか〜!?」
「へへへぇ、ふあ〜い♪」
無事、抜歯が終わり、歯医者さんに絶賛された。
「いやあ、近年で一番の大物でしたよ。開けたはいいけど、お帰り願おうかと思っちゃったほど、大変でした。でも我ながら、惚れ惚れするほど、うまくいきました。で、これまたとっても大人しい患者さんでしたね。ウンともスンとも言わないンだもの。」
お酒に弱いからなのか、素直な性格だからなのか、笑気麻酔がと〜ってもよく効いちゃった私。
記念に貰った最後の親不知は、ペンダントにでもしてみよっかなぁ〜♪
それから10日間、赤ちゃんの離乳食と同じ過程をたどり、開けられないおちょぼ口でチビチビ食べながら、これが最後、究極の親不知ダイエットさっ!と楽しんでる。
でもその効果のほどは、期待できない。
だって、食べられないウップンがどんどん膨れ上がり、テレビに映る全ての食べ物を穴の開くほど見つめ、ヨダレを垂らさんばかりにその味を想像してるンだもの。
痛みが無くなったら、片っ端から食べちゃうンだあ〜!
クリスマスもお正月もいっぱい食べちゃうンだあ〜〜いっ!!
やっぱダイエットって・・・、難しい。