Vol.37

観音さま・大仏さま・弁天さま

朝起きてみると、なんともいいお天気!
こんな気持ちのイ〜イ日には、とにかくどっかへ出かけたくなる。
朝食も、自然にサンドイッチを作り、ピクニック気分を盛り上げる。
たしか鎌倉には、ハイキングコースが豊富にあったハズ。
サンドイッチを頬張りながら、観光ガイドブックで研究する。

海にも穏やかな日差しがやってきて、春一番も二番もとっくに到着してる。
でも寒がりの私は、まだ海への気合が入らない。
どうしても雪山モードから切り替わらないのだ。

今年の冬は、犬猫たちの病気が相次いだので、私には雪山遊びが物足りない。
もう一回は滑りたいなァ〜と言いつつ、だらだら月日は過ぎていく。
アリスの喪に服しているうちに、季節はどんどん春めいてきた。

とにかく今日はどっかへロングの散歩に出かけるぞっ!
夫を誘い、春のお彼岸の日曜日、いかにも混んでいそうな日だけれど、ナッシュを連れて出発した。
長谷観音さまから鎌倉の大仏さま方面へと歩く。
思ったとおりの人出で、道路は渋滞、歩道は人で溢れかえっている。

ナッシュは、人で混みあって狭い歩道を、上手に付いて歩いてる。
でっかい犬に気づいて、人々はいろんな反応。

「うわァ!イヌだァ!!でぇ〜っかいなァ〜」

「か、かわい〜↑?」

「シェパードだ!お利口そうな顔してる〜。」

アリスを連れていてもヨークシャーテリアだ!とは言われなかった。
どうしてナッシュは、犬種を言われるンだろう?
近頃、あまりいないからかな?実物を見ることがあまりないからかな?
そして大抵そのあとに続く言葉は、「警察犬」だ。

テレビなどで見るシェパードのイメージは、警察犬なンだろう〜ネ。
現に道で警察官とすれ違ったら、ニコニコと挨拶されてしまったこともある!?

とにかくその警察犬もどきと、人混みの歩道を歩くが、あまりの混雑に、つい横の平行してそうな裏道へと逃れる。

こっちは歩きやすくてホッとする。
でも私の行きたかった裏大仏ハイキングコースへ行かれるのかな〜ァ?
不安は当たり、ショートカットさせられてしまい、気が付いたら銭洗い弁天さまを目指していた。

こちらも人気の場所だから人が多い。

「せっかく来たンだから、お金洗って行こうよォ〜。100倍になるンだから!?」

「無理無理ィ、あの人混みじゃナッシュ行かれないよォ。」

抱っこできたアリスと違い、ナッシュ連れじゃァどこにも寄れない。
ま、しゃ〜ないか。
観光・参拝はすべて諦めて、ひたすら歩くことだけに専念する。
かなりキツイ勾配の坂だけど、どんどん登って行く。
今度は源氏山公園を目指す。

いつもはナッシュがリードを引っ張ると叱るンだけど、この坂は引っ張ってくれるととっても楽チン、どんどん引っ張れェ〜♪
登りきった山頂は、かなり広い公園で、ナッシュと散歩するにはとっても良さそう。
でも当のナッシュはここへ来るまでで充分だったみたいで、地べたにへたり込んで、ハァハァ〜。
持ってきた水筒のお水を美味しそうに飲んで休んでいる。

ここからは葛原ヶ岡ハイキングコースもあるが、そっちへ行ってしまうと北鎌倉へ出てしまうので今日は諦める。
公園内には、源頼朝像が鎮座していた。頼朝の鎌倉入り800年記念のシンボルだそうだ。

化粧坂と書いて「けわいざか」と読む坂を、下るコースもあった。鎌倉七口の一つらしい。
でも巨石が露出したその急坂に、ナッシュ連れを考えてここも止めた。
ここでナッシュに引っ張られたらイチコロだ!

結局、寿福寺の墓地へ降りるルートで帰ることにした。
ここも獣道みたいな所があったりで、森林浴ができちゃった。
もちろん野生のリスにも出会えた。

帰り道、スーパー紀ノ国屋で夕食の買い物。
決断の速い夫に買いに行って貰い、私は外でナッシュと座り込んで待っていた。
と、突然右側からシェパードが現れ、私の左に座っているナッシュに飛び掛ってきた。

瞬間、ナッシュの首輪を掴んで、応戦しないよう体をひねって私の後ろへ抑えながら立ち上がっていた。
連れていた初老のご婦人がスローモーションのように、私の目の前へ転んで倒れていった。

周りの人たちは相当驚いたみたいで引いてたけど、シェパにとっちゃ大したことじゃない。彼らにとっちゃ挨拶代わりの脅しである。
油断大敵、シェパードを連れている時は、常に周りに犬がいないか気をつけていないとこういうことが起きる。

幸い相手の女性にも、犬達にも、怪我がなかったようで良かった。

そして家の近所で、顔なじみの老シェパを連れたご老人に会う。
いつもその老シェパはナッシュを見ると「おい、若造っ〜!」と吠え掛かる。
するとナッシュも負けずに「なんだ?ジィさまっ〜!」と吠えて答えてる。

「すいませんね〜、ちゃんとご挨拶ができなくて〜。」

するとそのご老人。

「しょうがないですよ、シェパードは。自分が一番偉いと思ってンだから〜。」

目からうろこ!
そ〜だったのか!?
それですべて合点がいくぞっ!!

ラブラドールやゴールデンみたいに、ノーリードでニコニコ平和に遊べない「ワケ」だ!
他の犬のシタデに出て、仲良くして貰おうなんてこれっぽっちも思ってない「ワケ」だ!
だからおバカな「ワケ」じゃなくって、だからラブやゴールデンがお利口って「ワケ」じゃなくって、それが犬種の違いってモンなんだ!

なあ〜〜ンだっ!
安心しちゃったァ〜。

だから今日も、自分が一番偉いと思ってるナッシュは、猫族の中では何故か一番偉いと思ってるポーと、どっちがホントにエライかを掛けて、戦っているのであった。