Vol.31

スクルーじぃ

気づかぬうちに秋が過ぎ、あっという間に師走も押し詰まり、も〜うい〜くつね〜る〜とぉ〜♪の時期になってしまった。

それに今日は、じんぐるべ〜♪の☆クリスマス☆だァ〜!

さすがに朝の海岸散歩は寒くて、防寒対策をしても、寒がりで根性なしの私は、じりじりと散歩時間を遅らせていった。もう少しお日様が出て来てからのほうが〜とかいいながら、今日は朝ご飯を済ませた後、じっくり消化してから10時過ぎの出発。

年の暮のこんな時間に散歩してる暇人は、ここ鎌倉にもあまりいないと見えて、広くて見通しの良い海岸には人っ子一人見当たらない。端から端まで、私とナッシュだけの貸切り浜辺。

凍て付くような海風だけど、こんな贅沢な散歩はないと喜び、リードを外して落ちてる木切れを投げる。夢中で走って追いかけるナッシュは、にっこにこで大はしゃぎしてる。

引越し前の近所にあった公園は、大きな公園とはいえ、見通しのきかない起伏のある公園で、犬連れが多く、とてもリードを外して走らせるなんて恐ろしくてできなかった。

他の犬に対して、仲良くお友達〜♪という単語を知らないナッシュは、ガウガウするので、そばへは寄れなかったのだ。

今でもその気質は変わらないので、犬とのすれ違いは緊張するが、散歩道や浜辺は広いので、喧嘩になることは、まず無くなってきた。小さい犬に吠えられることはあっても、ナッシュから吠え付くことは、まず無い。広い所を散歩してると、犬もゆったりした気分になるンだろうか。

家に来た人に対しては、番犬として吠え、匂いチェックをし、家族が迎え入れているのを確認すれば、あとは猫のように大人しい。こんな優しい犬で番犬になるの〜?って友人が心配するほど、人に対しては温和だ。コワモテの見た目と違って、噛み付くことはない。

尤も泥棒が入った時は、どうなるのか分からない。テリトリーや主人が攻撃されているのを見たら、どう反応するのかちょっと興味はある。

大型犬は、腰を悪くすることが多く、太らないよう運動させなくちゃいけないのだが、かといって、腰に負担が掛かる、自転車で走らせるような無理な運動も良くないらしい。

土や砂浜の上で、無理のない程度に運動させるのが良いと、獣医さんに教えられた。

それからは、人や犬のいないところで、大好きな木切れを投げて取りに走らせたりしていた。すると、足に筋肉が付いてきてウエストも締まり、均整がとれた体つきになってきた。

さすが若犬、運動すれば体はできるンだ〜!と喜んでいた。ナッシュもとても嬉しそうに走り回っていた。もちろん犬連れが来るのが見えれば、すぐ呼び寄せてリードに繋ぐ。

ノーリードの小さいワンコ4匹に取り囲まれて吠えまくられ、尻尾を挟んでグルグル逃げ回ったことはあっても、噛み付くことはない。

人に寄って行っても、若いお姉さんが好きなので、顔を覗き込んで、ニコ〜ッ!として戻ってくる。ただそれだけである。

そんな良いコでゆとりのある散歩だから、私もつい油断していた。

遠くのほうから、何か怒鳴りながらこっちへ近づいてくる人がいた。犬は連れていない。今にも雨が降りそうな天気だから、傘を振りかざしながら、すごい剣幕で何か言いながら近づいてくる。

???聞き取れないので、立ち止まってその人を見ていた。木切れをくわえたナッシュも私とその人の間で立ち止まっていた。

「シェパードは猛犬やないか〜!。放して歩くとは、どういうことやぁ。警察いったろかあ〜!?ケイサツゥへ〜!県条例で決まっとンのやでぇ〜!あんたにとっちゃあ愛犬だろうが、他人も犬好きとは限らんのじゃあ〜!繋げと言っとるだろうがあ、なにしとるんやあ〜!こらあ〜!この前もお前は放していたなあ、旦那と子供と警察行ったじゃろうがあ、まだわからんのかあ〜?お前はぁ。また警察いこかあ〜!!」

このまま立ち止まってるナッシュと、そのご老人の距離が縮んで行くと、持ってる傘で刺されるかもしれないと、とっさに呼び寄せる。

とにかく「警察行ったというのは、人違いです。」と言っても、剣幕は変わらず。「訓練が入っていますから。」と言っても、まったく効果なし。

ナッシュが警察犬だったら良かったなぁ。訓練中ということで許されるかなぁ?とにかくやり過ごすしか方法はない。

真剣にご老人の意見を聞いていたナッシュは、「ウオン!」と一声吠えた。彼もご老人の口調から、敵意を感じて抗議したのだ。こんなことは初めてだ。

私は、通りすがりの人に、いきなり怒鳴られたりするタチである。

センターラインのない住宅街の道を、車で走っていた時、女子高生が3人横に並んで歩いていた。もちろん歩道はない。曲がりくねった道で、注意深く横を通るため、道の真ん中を徐行し、左に戻ったら、すごいスピードで走って来た対向車が、タイヤから煙が出るほどの急ブレーキを掛けて止まり、するすると私の車の横へ付けた。

「道の真ん中、走ってンじゃあねえよ、この×△!」

よしゃあいいのに、そこで黙っていられない私。「人が歩いていたンですよ。」

その男性は、私に向かってツバを吐きかけて走っていった。窓は少し開いていただけなので、私に被害はなかったが、すぐ洗車せずにはいられなかった。

引越し前、老犬アリスと散歩しようとすると、決まって付いてくるマリン母さん猫。

一緒に歩いては、物陰に隠れ、人がいなくなるとまた出てきて一緒に歩く、可愛い散歩だった。ある日、散歩に出かけようと家から出てきた犬連れの人がいた。マリンが一緒なので私は立ち止まった。マリンも問題ない距離で道の端の自転車の下にいる。と、思ったら、その男性がこっちへ走り寄ってきて、マリンに飛び蹴りをしたのだ。

慌てて言った。「ウチの猫です。何をするんですか!?」

すると、その男性は、言った。

「猫は、ウチの犬を引っかくんだよぉ〜。文句あんのかよ〜こらあ!」

黙っちゃいられない私。ウチの猫はお宅の犬を引っかいたことはないとか、抗議していたら、肩を怒らせてスゴみ、私に掴み掛らんばかりに脅してきた。それ以来その人は出会うと、道に立ち止まって私に通せんぼをしてくる人になった。

何故こんなちっこいオバサン相手に、喧嘩吹っかける男性がいるンだろ。

私もつい言い返しちゃうから、火に油注ぐンだろうね。でも、腹がたつから黙ってらンないンだモン!

ホントは、いつも微笑んでいて、人と争わずに穏やかに過ごしたいと望んでいるのに、どうしてこういう目に遭うンだろう?

人に道尋ねられることも多い。

デパートの店員さんには、「素直そうなお顔してるからつい声かけちゃった。」と言われたことはある。

大人しそうな無害な顔なんだろか。

舐められる顔してンだよ、と家族には言われてる。

オッカナイ顔してればいいの?できないだろうなぁ〜。

2メーター位のでっかいボディガード連れて歩いたら、こういう事件には遭わなくなるのかなぁ。武道でも習おうか!?

怒鳴って来る人は、しょっちゅうやってる事だから、なんとも思っていないだろうけど、怒鳴られる方は、びっくりして、こんなつまんないことを一生覚えていそうでイヤんなる。怒鳴られたその時は腹もたつけど、それは時間が経てば憐れみにも変わる。

だって怒ると脳内にすごい猛毒が出て、体にもよくないンだって。いつも怒っているよりは、笑って暮らす方が健康で長生きできそうだ。あんなふうに怒ってばかりいられたら、家族や周りの人はヤになんないかな?

人を怒れない私には、いきなり出会い頭に他人を怒鳴るなンて、到底真似できない。

あの調子で、道にタバコを捨てた人、落書きする人、夜中に暴走するバイク軍団、どんどん怒鳴り飛ばしてやって欲しい。国会でも外国でも怒鳴り込んでって欲しい。私みたいなオバサンを相手にしてるより、もっと怒鳴られなくちゃいけないトコはいっぱいあるでしょ〜。その方がよっぽど役に立つ。

法の番人、正義の味方、傘を片手に関西弁でまくしたて、すごい剣幕で相手の度肝を抜く!

クリスマスに出会ったので、密かにスクルーじぃと命名させて貰うことにした。

メリークリスマス!