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ある夜、そろそろ寝るかと布団へもぐりこんだとたん、外で聞きなれない叫び声がした。
小動物、たぶんウチの猫の悲鳴。
でっかいワンコに食われたかッ！？
これは一大事！っと、飛び起きる。
息子達も血相を変えて、部屋から出てくる。
気づかぬうちに、老犬アリスが、おむつを落っことしていた。
おまけに、う○こを玄関先に落としてあった。
ボケたとは言え、アリスはワナを張る名人である。
暗がりの中、要領の悪い息子は、まんまとそのワナにハマって、素足で踏んでいた。
ぎゃァ〜！
仕方なく、足を洗いにケンケンで風呂場へ向かう。
出直して外へ出ようとし、ご丁寧に今度は反対の足で踏んづける。
ぎゃァ〜〜！！
半ベソで、もう一度ケンケンで風呂場へ走る。
ほくそえむアリス。。。「フッフッフッ、してヤッタリ・・・。」
大騒ぎの末、やっと救急隊は現場へたどり着く。
ラーラかッ！？
黒っぽい小さめのケモノが家の前の道に倒れてるッ！
そばにたたずむディプシー。
なんだ！なにが起きたんだァ！？
騒ぎで寝ぼけた顔して、でっかいワンコが犬小屋からノソノソ出てくる。
犯人はコイツでは、ないらしい。
ここは狭い道。おまけに坂。
車はおろかバイクや自転車さえ、入って来ない。
まして深夜の事。交通事故はアリエナイ。
だとしたら、第一発見者のディプシーがまず疑わしい。
倒れているケモノを見てみる。
ラーラではない。
大きさは、小さめの猫くらいだが、猫ではない。
何だ！？このケモノはァ〜？見たことない生き物だゾ〜〜！？
明るい玄関先へ運んでみる。まだ生きてるみたい。
幸い目立った外傷はない。
鼻はトンガって顔が長い。鼻のアタマは、体のわりにはブブっと大きめ。
耳は丸く立っている。
足は体に比べて短めで、犬のような爪。
尻尾は、日本猫のように細めで長い。
胴体は、細長い。
全身が黒っぽく一色で、縞模様は、ない。
もちろん首輪などしていない。野生の感じだ。
「これだァ〜。オレが夜中に庭で見たのは！」
確かにフェレットのような胴長の感じだが、でもリスとはマッタク違う。
タヌキ？いや、顔が違う。
いたち？いたちを見たことないから、解らない。
あらいぐま？尻尾が違う。
アナグマ？そんなの日本に野生でいるのか？
山猫？そりゃここは山だけどサ〜。
やっぱ、憧れのムジナかなァ〜？
何だか解らない未知の生物だが、生きているし、きっとショックで動けないンだろうから、とりあえず箱にでも入れて置いて、明日動物病院で診て貰おう。
靴の箱にちょうど収まり、玄関の外へ置いてみる。元気になったら自力で逃げられるように、フタは開けておく。
でもいったい何が起こったんだろう。
現場の状況から察するに、やっぱ犯人はディプシーに間違いないだろう。
「最強の戦士」と言われるだけあって、一人、未知の生物に戦いを挑んだに違いない。
話し合いがついてたワケでは、なかったのだ。
と、すると、これだけ動物の多い我が家の天井裏を棲家としたあのケモノは、よっぽど腕に自身があったのか、ハタマタよっぽど世間知らずの恐い物知らずということになる。
それでもとにかく、これは新種の生物かもしれない。
明日が楽しみだァ。
明朝、玄関先に置いた靴の箱を見てみる。
なんと可哀想な事に、新種のケモノはそのまま動かなくなっていた。
ショック死だろう。南無阿弥陀仏・・・。
さっそく動物病院へ電話してみる。
でも、生きているならまだしも、死んでしまった野生動物は、やっぱ見て欲しいとは言いがたい。
環境事業局へ電話。
「タヌキでしょうかネ〜。」との見解。
数時間後、引き取りに来てくれたけど、職員の人には会えなかったので、これが何というケモノなのか、聞くことができなかった。
やっぱ、野毛山動物園に電話すれば、良かったのかなァ〜。
ディプシーは、落ち着いたモン。
特に威張るワケでもなく、淡々としている。
これじゃあ、他の猫が蛇くらい獲って来ても「偉くない」と言っちゃえるだろう。
ある意味、番猫。家を守ってるンだモンね！
野生動物には、棲みにくい時代になったんだねェ〜。
山はどんどん切り崩されてヒトが住むようになっちゃってるし、居場所がなくなるよねェ〜。
息子が出会った日本猿も、その後、磯子の方でしばらく過ごしていたらしい。
友人宅の干し柿を盗んで、首に掛けて逃げてったンだって〜！？
小学校の鉄棒やブランコにも乗って、遊んでいたらしい。
今頃はどこを旅をしているンだろう？
あのケモノ君には、ホント申し訳ない事でした。
なにも悪いコトしてないのに、ウチへ来たばっかしに、やられちゃって・・・。
もしかしたら、生物学上、大発見の新種のケモノだったかもしれないのに、誰もそれを認めてあげられなくて、モッタイナイ事をしてしまった。
ウ〜〜ン、誰かに見て貰いたかった〜。
せっかくだから、絵にて公開。
何というケモノか解る人は、エライ！
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