Vol.14

でっかいワンコ

人間4人、ちっこいワンコ1匹、どらニャン6匹の生活にも飽き足らず、私にはでっかいワンコと暮らしたいという「野望」があった。

今まで中型の日本犬やそのMIXとは一緒に暮らし、充分にその魅力を堪能した。彼らの可愛さ、忠実さもよ〜く解ってる。小型のアリスも誰彼構わず大歓迎のほがらか犬で、これまた飼い易い。小さい子供がいる家には、ちょうどいい遊び相手だ。

そこで今度は今まで未体験の大型犬ゾーンを覗いてみたい。ぶっとい首っ玉にしがみ付いて、ズリズリと引きずられてみた〜い。これが夢!

中学生のとき、私は寮に入っていた。そこには番犬目的だったのか、家を離れた寂しい子供の癒しだったのか、でっかいシェパードがいた。初めはそのデカさにびっくりしたものの、動物バカな私はすぐ友達になり、日曜には一緒に近くの山へ散歩に行く仲になった。そのデカさプラス人に対する優しさ・利口さは忘れられない存在となった。

その遠い記憶がよみがえり、どっかに飼えなくなったでっかいワンコはいないかの〜と、毎日、いろんな里親探し掲示板を見るのが日課になった。

平成大不況のご時世から、飼えなくなったという事情も多いけど、捨てられたコを保護したというのも多い。世の中、優しい人が多いんだネ。でも、ネットに出るのは一握りの救われた幸せなコたちで、ほとんどは保護センターでの安楽死という、ちっとも安楽なんかじゃない苦し〜い窒息死へ送り込まれているのが現状だ。動物達は、その最後の瞬間まで、飼い主が迎えに来てくれることをケナゲに信じて待っているのだ! ど〜か処分だけは避けて欲しいと、飼い主さんにはお願いしたい。

日本人の動物との付き合い方は、ど〜なんだろうか。しつけやマナーがかなりいい加減なところがある気がする。気持ちは解るンだけど綱を外して公園を走り回らせてるし(条例違反)、道や公園はフンだらけだしね〜(フンじゃうョ〜)。

ドッグランがあればいいんだけど、近所にゃそうそうそんなのない。週末あれだけの犬連れが来てるんだから、多少の使用料払っても利用する人いるんじゃないのかな。新しい市長さん、小さくてもいいから清水ヶ丘公園にもど〜かひとつ!

しつけ不足やマナー違反から飼い主への風当たりも強く、動物への誤解も生じるだろう。それで動物不可の賃貸住宅が多くって、引っ越す時、手放さざるを得なくなる。動物達は何も悪くないし、悪いのはマナー違反する人間、しつけを間違ってる人間なのになァ〜。

そして、動物と暮らすということが一種の贅沢のようにもなり、その種類によってはステータスにさえなってしまってないか? どっかおかしいゾ〜!? 

純血種だって、もとは人間が勝手に交配で作り出した雑種なハズ。江戸っ子みたいに3代続けば認めるとかならわかるけど、人間はハーフがモテるんだゾって。私なんて3代前のご先祖様すら、よくわからない。

なんで純血種はあんなに高い値段なんだろう? 確かに純血種は美しい!でも雑種も味があってなかなかイケテルぞ〜! 中身は大差ないと思うんだけど。訓練すれば雑種でも介助犬とかできるらしいし、純血種だってしつけなければタダのアホになるだろ〜し。

舶来品が好きな国民だからかナ? それとも値段で勝負なのかナ? 購入金額で有難さが変わってくるんだろ〜なァ。犬にゃ知ったこっちゃないだろ〜けどネ。

さてそんなギモンと矛盾を自分に問いつつ、家族に呆れられながらもネットの日々は熱心に続いていた。大型犬を飼っている人のHPも覗いてお勉強。体力と気力(気迫?)が必要と感じ始める。そしてますます大型犬に憧れていく〜。

掲示板に大型犬が出ると里親希望メールを送ってみたが、すぐに経験者の所へ決まっていった。そのコが幸せを掴んだと思うとホッと安心。でもウチみたいに、こんなに先住動物がいて、大型犬初心者だとなかなか無理なのかもと、ちょっと諦めが頭に浮かんできた。

それでも、どうしてもショップやブリーダーから購入するのはイヤだった。値段が付いているのが、イヤなのである。必要経費は理解できる。でも高級外車を買うワケじゃなし、ダイヤの指輪なワケじゃなし。私にゃ、ぶっとい首っ玉があればそれでいいんだから。息子同様、デキの悪いコほど可愛いンだし、そんな大それた飼い主ではないのである。ま、単なるヘソマガリである。

きっとどっかにご縁があるし、それまでず〜っと里親探しを見続けるんだモ〜ン♪と開き直ってきた頃、また一つでっかいワンコの募集が出ていた。5秒考えて、メールしていた。

たぶんたっくさんの希望者メールが送られてきて、すぐにどっかへ決まるんだろう〜ナ。何度かの経験で期待感も薄まり、でもご縁があれば返事が来てるかもと、翌朝起き抜けにすぐPCを開く。

ん!メール着てる!!ワンコの件だァ!!!

ええ〜〜!!!!ウチに譲りたいってェ〜〜〜!?!?!?

ホントに私、起きてるんだろうか!?これは夢なんじゃなかろ〜か!?

何度も目をこすり、ほっぺたツネッて画面を見直す。夢じゃ〜なさそうだ。

日曜の朝にも関わらず、寝ている息子達を次々と叩き起こして大騒ぎを始める。

嬉しくって、踊り、跳ね回ってみる♪ やっぱり嬉しい! 狂喜乱舞の大興奮は迎える前にも関わらず、何日も止まらない。道を歩きながらも、つい一人でニコニコしてしまう〜。

あやしいオバサンの出来上がり。

毎日メールしあって4日後、私達はハヤる気持ちを抑えつつ、迎えの車を走らせた。

初対面。でっかい。吠え声もアリスとは違う。でも期待どおりのぶっとい首っ玉!

お別れの時、飼い主の方たちは目を真っ赤にして涙を溢れさせ、見送って下さった。

その涙を見て、深〜い愛情と重〜い責任をズシ〜〜ン!と感じた。

フロントガラスの向こうは涙でぼやけ、ハンドルを握る手に力が入った。

そんな事情を理解していたと思われるでっかいワンコは、とってもいいコな4才のオス。

ドン・ジョンソン演じるナッシュ・ブリッジスのごとくカッコよくモテるようにと、ナッシュと名づけられ、大歓迎で我が家に迎え入れられる。初めはうまくいくのかと心配していた家族も一目で彼のとりことなり、一日中ナッシュのことが頭を離れないらしい。

ぶっとい首に抱き付いてみた。おっきなベロで顔舐められた。でっかい足にも踏まれてみた。ぶんぶん尻尾にお尻叩かれた。一緒に犬小屋入ってみた。散歩で引っ張られてスッころんだ。ボール遊びを教えてみた。んん〜♪ なんともシ・ア・ワ・セ・だ〜!

この出会いに感謝! インターネットに感謝! 長生きするモンだァ〜!

かくして、人間4人、動物8匹!の大所帯となった我が家であった。