Vol.12

ハクション大魔王

毎年、春になると、朝のハクションが始まる。

目が覚めかかったとたん、くしゃみ連発、鼻水ズルズル。春眠、暁を覚えずなのに、あと5分!の二度寝ができない。ふとんの上の犬・猫たちも、幸せな眠りからいきなりのハクション連発騒ぎに、ホントに迷惑そうな顔を向ける。

花が咲いたとか、ホーホケキョが鳴いたとか、そういう季節感の前に、くしゃみ・鼻水・鼻づまりりんで、春の訪れを知るのである。

きちんと検査してみたワケではなく、自己診断で、たぶん話題の花粉症、私ってハヤリに敏感! 見かけどおり?体質もデリケートだったんだァ♪と思ってた。

今年は、くしゃみ連発もあまりなく、自称・花粉症は治ったか?と喜んだ。

んなこたァない!とみんなに言われたが、いや、海に山にと健康的な生活してるから、きっと治ったンだといばってた。

ところがどうしたことか、3日程前から、すごいくしゃみと微熱まで出てきた。これは息子のインフルエンザがうつったか?ハヤリだしィ、早めに注射でもと、勇んでお医者さんへ。息子も診て貰っているお医者さん、診察し終わって一言。

「アレルギー性鼻炎ですね〜。インフルエンザじゃないですな〜。」

言われてみると、喉はくしゃみで痛いだけ、アタマも痛くないし、熱も弱い。花粉症って微熱まで出るンだ〜!?こんなの初めてだ!

病人気分で寝込む覚悟だったのに、違うと言われればしょ〜がない。

四角い部屋をま〜るく掃除機かけて、少しでも部屋の花粉を減らし、ティッシュかかえて鼻かみ続けることにした。しかし、毛むくじゃらの6匹が勝手に外へ出かけ、帰ってくれば「ただいま〜」とスリスリしてくるので、しっかり花粉はばらまかれる。近所には雑木林のような公園だってあるし、だいたい手入れしてないウチの庭がジャングルである。何が自分のアレルギーの原因かもわかってない。

我が家では、デリケートな事は言ってらんないのが、現実である。

花粉症って、花粉が悪いってだけじゃあなくって、ディーゼル車の排気ガスを多く吸っている都市部の人がかかりやすいとか聞いた。思い起こせば、生まれた時から、大通りの交通量の多いところで育ってきた。大型ダンプが行き交う交差点で、我が家はいつも地震のように揺れていた。鼻の中は、排気ガスで黒くなるほどだった。これでは、肺の中も、真っ黒だろう。体にいいワキャない。

子供の頃、朝、母が「ハ〜クシロッ、ハ〜クシロッ」っとくしゃみを連発していて、早くしろ、早くしろと、せかされてるように聞こえた。今の花粉症という言葉も無い頃のハシリだったんだナ。その体質をしっかり受け継いで、今やりっぱなアレルギー性鼻炎となる。治るこたァないらしいので、これは薬を飲んでごまかすか、花粉のないとこへ避難するしかなさそうだ。ウ〜ン、後者でありたい!できれば雪山!南の島なんかもいいな〜!

猫のマリン母さんは、ノラ生活でよっぽど寒さが辛かったのか、灯油ファンヒーターのそばでぬくぬくしてるのが、現在の日課である。しかし、昔はノラやってたから、鼻炎持ちである。常に鼻水で鼻の穴が黒く、匂いかぎも入念にしないと納得できないみたいだ。だいたい猫は犬に比べると、嗅覚は鈍いみたいで、どの猫もじっくり匂いを嗅いではいる。

このマリン、こともあろうに灯油ファンヒーターの噴出し口の匂いを嗅ぐのである。

するとアッと言うまに、ヒゲはクルクル巻きになり、本人は大真面目だが、アヤシゲな手品師みたいな顔となる。

去年、我が家へ来て初めての冬にそれをやったので、まあ初めてファンヒーターを見たんだからしょうがないね〜と言いながらも、動物病院では大爆笑されていた。

ところが今年もまたやっている。せっかく一年かけて治ったヒゲが、また今年もクルクル巻きである。気に入ってるとしか思えない。おまけにその息子のティンキーもクルクルヒゲである。遺伝してしまった。それとも流行っているのか!?

猫のヒゲは大事だろ〜に、でもそれでぶつからずに歩いてっからまァ良しとするかっ?

こんなヒゲでも、猫社会じゃあ、個性的なファッションと言われてるのかもしれない。飼い猫の特権と自慢してるのかも。似たような茶トラだらけだから、少しは違ったカッコをしたくなるとも考えられる。

でも、そのマリンの顔を見ながらくしゃみ連発していると、

「呼ばれて飛びでて、ジャジャジャジャ〜ン♪」

と、ハクション大魔王が出て来そうな気がしちゃう私は、古いかなァ〜?