Vol.3

ベティちゃん

友達の友達がやって来て、まつげパーマをしてくれるという。まつげパーマをしていれば、海に入って化粧が落ちても、まつげは「ばっちし」らしい。おもしろいからやってみよーと仲間の勢いに乗せられて、初体験。

髪のパーマって結構きつい匂いと強そうな薬剤のイメージ。それを目玉の上にちょっぴし生えているまつげなんかに使うのかい?ちょっと怖い。友達たちが先に挑戦するのをコワゴワ見学しながら、残った友人とからかう。始まったら動いちゃいけないっていうし、話もしないほうがいいらしい。これは私にとって、就寝を意味する。

「まつげクルンになっちゃったら、アイシャドウやアイライン入れにくいかな。」
「目は大きくなるよね。」

始まれば、みな一様に寝に入る。小一時間のち、渡された鏡を見てみんな「うっわー!」

それぞれそれなりに「ベティちゃん」になっている。互いの顔を近づけあって覗き込み、それぞれ感心しあって大騒ぎ。ビュウラーでやったようなものだが、満足度が違う。これは私の自前なのっていう気持ちになっている。でもホントの驚きは夜の洗面所で起きた。

いつものようにワッシワッシと顔を洗い、ボケたすっぴんが映るはずの鏡の中に、やる気マンマンのベティちゃんがいたのだ。やけに目だけが元気バリバリ、ランランラン♪

これは朝起きた時にも衝撃を受け、イッキに目が覚める。しばらくは毎日必ずびっくりする。しかしそのやる気のある自分の顔を見ていると、何故かホントにやる気が起きて来た。まあ普通の人に比べられちゃ大したやる気じゃないけれど、私なりに捨て捨てモードにスイッチが入り、日々チマチマごみ袋を膨らましている。これを家族は発作と呼んでいる。

「明日、嵐になる。雪が降る。」とわめかれる。

自分でも、あとで「あ〜〜!あれ捨てなきゃよかったァ!」と、後悔しなけりゃいいんだけど。
(捨てたモノをしっかり覚えているから困る。しまったモノは安心して忘れ去ってるのにィ)

これで性格がかわるとは、なんて単純て思うけど、味をしめたのも事実。それじゃあ次はどうしようか。「コラーゲン注入ってやってみたくなあい?」友達がささやく。だんだんおかしな方向へ向かっているような気もする。なんとか姉妹になっちゃうぞ〜。

まつげバッチシでベティちゃんになって、目元にコラーゲンでも入れて芸能人みたいに若返っちゃったら、やる気モリモリで何しよう。そのやる気の方向がわからない。私の遊びはせいぜい海か冬山だし、いまさら家事にやる気が出つづけるとは思えない。

ただ今、人生のハーフタイム中の為、だ〜らだらをポリシーにしている私。今んとこ新しい遊びを開拓する予定はないから、手持ちの遊びをもうちょっと掘り下げてみよう。手始めに心のリハビリと称して、海に浮かんでこようかな、パン持ってお魚に逢いに。だって濡れてもお目目はバッチリだもんね〜。