毎月第2・第4木曜日更新 (連載の場合は続けて次週更新します)

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Vol.25 長生きするょ〜
 

夏休み、親友が娘を連れて泊まりに来た。
いつも、「実家に帰るゎ」とワケわからんコト言いながら、我が家に泊まりがけで遊びに来てくれる。
学生時代には、お互いの家をしょっちゅう行き来しながらお互いの親を、「お母さん」「ママ」と呼び合ってた双子のような関係。
最近は年に何度か、東京から都会の疲れを癒しに我が家に里帰りしてくるようになった。

彼女の娘は高校3年で、受験生として猛烈に忙しい夏休み。
その僅かな休みを使って、泊まりに来るのを楽しみにしてくれていた。
用事があって昼に出発すると言う母親を待ちきれずに、朝から大荷物をガラガラ引きずりながら、一人、電車に乗って先にやってきた。
女の子のいない我が家にとって、いつでもウチのコになっていいよと言い続けてる可愛い娘である。

その日は心ゆくまで犬猫にたっぷりまみれ、日頃の心身の疲れを湘南リズムでゆったり細胞から休めてもらった。
夜は思いっきり呑んで食べてしゃべって笑って、久々に一緒に過ごす楽しい時間。
酔っ払いは、寝ながらも、笑い、唄ってた♪

翌日は海遊びを体験して貰おうと、二日酔いを励ましつつ、材木座へと出かける。
ちょうどその日は、風も波もなく、最高の初心者日和。
でっかい初心者ボードのイージーライダーで、母と娘は、インストラクターに始めての操作を習うことになる。

私も潮水で遊びたいけれど、ウィンドするにも、サーフィンするにも、あまりに地味な海の状態。

そ〜だっ!
新しい遊びの、パドボー、やってみよう。
ウィンド初級者用の大きめボードで、パドルを使って漕ぐ遊び。

波も風も無い日にゃ、もってこいの、コレから流行り始めそうな遊びなンだそうだ。
そのボードで波に乗ってサーフィンしたりもするらしいけど、最初っからそれはちょっと無理。

まずはライフジャケットちゃんと着けて、海岸付近をへっぴり腰で漕いでみる。
何度かバランス崩して落ちたけど、だんだん慣れてくると面白い。

ボードの先端方向に向いて立ち乗りし、大きなパドルを右で数回漕いでるとだんだん曲がるから、今度は左で漕いで…と、繰り返す。
潮の流れや、風の影響で、ボードがどっちかに流れるから、反対側ばかり漕いでもちょうど良い方向に進んだり。

曲がり方は、スノボーと同じスタンスに足位置を変えて、片側だけでパドルを漕ぐ。
小さく廻るのにはまだ練習が必要だけど、ボード上でバランスをとるのが面白い。
サーフィンみたいに、ず〜っと前まで歩いていって、先端近くで乗ってみたり。
足の踏ん張り方や、漕ぐパドルの力の入れ具合も分かってきて、こりゃどこまでも行けそう〜!と思えてくる。

「逗子マリーナまで行ってみよっか!?」
一緒に初パトボーしていた海の友人が、誘ってくれる。

親子にウィンドを教えているインストラクターに聞いて、大丈夫、行けるょと励まされ、挑戦。
普段近寄っちゃいけないと思ってる玉石付近をパドって行けば、海水は底まで澄んで見え、うわぁ、綺麗ぇ〜♪と声が裏返る。

玉石を越えた事などなかった私にとって、普段見慣れた景色と違う逗子の景色。
マリーナ歩道の椰子の木の下で、観光客の人々がコッチを見てる。

海上に立ってボードを漕ぐ二人の一寸法師。
どこへ行きたいのか、何がしたいのか、遭難者なのか、不法入国なのか?
誰がどう見ても、不思議なアヤシイ光景かも。

<流行の最先端の遊びに挑戦する二人!みんなに憧れの眼差しで見られてる!?>
本人達のアタマには、その勘違いがあるモンだから、ココで落ちたらカッコ悪い。
踏ん張ってバランス取りながらマリーナに近寄ってみる。

「どっかから上陸できるかな〜?」
「もう少し先まで行って、岸に近寄ってみよっかぁ?」

そんなこと言いながらパドッてると、遠くから水しぶきを上げて、白い大きなクルーザーが帰ってきた。

「マズイ!ここはマリーナの出入り口じゃない?」
「あんな波を受けたらひっくり返っちゃうよぉ。ここは危険だ、帰ろう〜。」

材木座を目指して、えっちらおっちら方向転換。
高級大型クルーザーから、逃げるように漕ぐ二つのパドボー、超・原始的。

再び玉石で透き通った海を覗く。
「ここでシュノーケルしたら熱帯魚みたいなブルーの小さなお魚がいるの、見えるンだよ〜」
「う〜ん、それ、やってみた〜いっ。」

風の有無に関係なく、エンジン・ガソリン関係なく、手漕ぎパドルの力だけ。
のんびり進む自分とボード。
疲れたら座って漕げば良いンだモンね。

みょ〜〜に、この素朴な遊びの面白さに嵌ってしまった私たち。
たっのし〜いぃねぇ!?コレッッ!!

ウィンド初挑戦した親子も、少ない風の中、パタパタ進む経験が出来て大満足の様子。
すっごいじゃん〜、私なんか始めは落ちてばかりで、全然進まなかったよぉ〜。
やっぱインストラクターの先生が手取り足取り教えてくれると、すぐうまくなっちゃうンだね〜。

親友の娘が独り言のように呟いた。

「長生きするよぉ」

え?なに?

「こんな気持ちいい暮らししてたら、長生きするって。」

アンタみたいな若いコに言われても真実味がないけど、
なるほど、確かにぃ。。。
幸せだモンね、ホントそうだよねぇ〜。

地味な海の日も楽しみになってしまった私、さらに長生き宣言させてもらおうと思ったのだった。

※次回の更新は9月28日(木)です。お楽しみに。