毎月第2・第4木曜日更新 (連載の場合は続けて次週更新します)

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Vol.15 ラン・ドッグ・ラン 後編
 

大丈夫だ。
アレックスは、もの凄い馬力を発揮して、知らない人にはちょっと恐いくらいの迫力ある走りを見せる。

タイラーは笑いながらフェンス際を走り、遠くの方まで探検しに行ってしまう。
ドッグランは7000坪とかの広大な敷地が全部繋がっているから、狩猟犬タイラーはどこまでも獲物を捜しに?行ってしまう。
二匹に別行動とられると、目が行き届かない。

タイラーを追いながら歩いて行くと、プール棟に到着。
入って泳がせてみる。
さすが水泳部部長タイラー、泳ぎだしたら止まらない。
しばらく遊ばせてから無理やり引きずり出して、外で自然乾燥。
また走り出したら止まらない。
トライアスロンな犬だな〜。自転車も乗ってみるか?

日が高くなってきて、外で集まっていた飼い主さんたちが、三々五々日陰や食事へと散っていく。
広場が貸し切りになってしまった。
と、思ったら、遠くにいたバーニーズ♂にタイラーが突然襲い掛かった。

このコは、腰が悪くて手術をし、リハビリの為歩かせに来ていると言っていた。
何も攻撃的なトコはないコなのに、オスだからだろうか、タイラーは気にして側に寄って行ってた。

「やめてー!やめてー!!」
飼い主さんが叫んでる。
全力疾走で駆け寄りながら、私も叫んだ。

「殴って下さいーっ!」

飼い主さんがタイラーの首輪を引っ張ってるが、そんなコトじゃあ噛み付いて離れない。
私はすぐにタイラーの口を両手でこじ開け、噛み付いてるタイラーを剥がした。
毛量の多いバーニーズ君に怪我の無い事を確認した後、その場でタイラーの両頬を掴んで激しく振り回し、マズル(口)を掴んで怒鳴り、叩いた。
タイラーは、すぐに反省して大人しくなるが、何をしたのか解ってないのだろう。

飼い主さんとバーニーズ君に土下座して謝り、暫く興奮の収まるのを待って怪我の有無を見る。
「もう、この犬は車に入れて出しません。ごめんなさい。もう絶対にリードを着けて放しません。」

タイラーは捨て犬で、この性格が災いして捨てられたのだろうと話した。
飼い主さんはいい人で、気持ちが落ち着くと理解を示してくれた。
「せっかく来たのだから、まだ遊ばせてあげてください。良い家に拾われて良かったね。」とまで言って下さった。

泣きたくなるほどショックだった私は、すぐに犬を車に載せ、そのまま車の中で2時間落ち込んだ。

穏やかで、誰とでも仲良く遊べ、吠えず喧嘩せず恐がらず、そういう犬がドッグランで遊ぶには良い犬なのだろう。

他の犬を気にして、相性が悪ければガウったり恐がったりするウチの犬たち。
でも絶対に人間には唸らず噛み付きもせず、服従している。
呼び戻しもアレックスはカンペキに理解している。

人間にも威張りンぼうの人、喧嘩っぱやい人、内気な人、人嫌いな人、色々いる。
人なら自分の性格を治そうと努力もできるけど、犬はそんなこたあ、知ったこっちゃない。
犬は吠えて噛み付くコトが、自己表現の動物なンだから。

そんなじゃ困る飼い主はどーするか!?
なんとか矯正して、平和に暮らせるようアタマ使って努力していくしかないンだね。

初めての犬連れお泊りで荷物が多く、口輪を忘れてきたコトをとても後悔した。
今度ドッグラン行くときは、タイラーには必ず口輪着けてオスの居ない時に、アレックスはなるべく練習して慣れさせるけれど、大型犬の居なさそうな時に遊ばせよう。
ってコトは、やっぱ平日に松田町へ行くしかないンじゃん!?

翌日、そんな二匹を連れて、ドッグランに行く気はもう失せ、友人宅ではタイラーをお庭に繋いで置いた。
ナチュラリストなタイラーは、鳥だ!虫だ!風に舞った花びらだ!とニッコニコで自然観察。
楽しくて、面白くて、超・幸せ〜!といった表情だ。

アレックスは人の側に居るのが好きだから、室内と外を行ったり来たりのストーカー。
昨日あれだけ走り回ったからか、これで充分満足の様子だ。

友人と私も、混雑した湖畔へ出かける気分になれず、家でのんびりゆったりと過ごした。
こないだ登った富士山が、まだ雪でアタマを白くしてて、良く見えてる。
こうした時間の方が、贅沢なお休みかもしれない。

家に帰った犬たちは、口も利けないほど、疲れきっていた。ってもともとしゃべらないか?
お留守番の猫達にも、語ってあげてよ、ドッグラン。

※次回の更新は5月25日(木)です。お楽しみに。