毎月第2・第4木曜日更新 (連載の場合は続けて次週更新します)

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Vol.7 にゃん月にゃんにゃん日 後編
 

身支度整えて、窓から外を窺う。
ポーちゃんの姿は無い。
むむむ、ディプシーの二の舞か!?
猫一家の一番ボスを取ると、修行の旅に出る慣わしなのかっ!?

ベランダに出て、お隣の広いお庭に向けて、恐る恐る呼んでみる。
「ポーちゃ〜ん、ポーちゃ〜〜んっ、おいでぇ〜〜〜。」

日頃、小学校の校長先生が廊下ですれ違う生徒に話掛けるみたいに、見かける猫には声掛けてきた。

「お、ディプシーまたここに寝てたの?あったかいねぇ〜。」
「ラーラちゃん、炬燵が好きだねぇ。お顔だけ出して寝てるンだ。」
「ポーちゃん、何咥えてきたの?靴下じゃん!」
「ティティちゃん、また食べてるの?うわぁおっきなお腹だねえ。」
「たっこぴー、なに甘ったれたお顔して。あまあま君になってるの?」
「マリンちゃ〜ん、その目やに、ちょっと取らせてちょーだい。」

そのせいか、みんな自分の名前は理解してるンだと思う。
大抵返事するし、獣医さんへ連れて行こうと思ってる時以外は、呼ぶと寄って来る。

しばらくするとそのお庭の奥から、すたたたたあ〜〜〜!っと走りよってくる茶色の毛玉。
なんと呼び戻しが効くじゃんか!素晴らしい〜♪
ブロック塀を駆け上がり、乗り越え、楽しかったぁ〜♪と転がってみせるポースケ。

フンフンフン〜♪
捕まえようとすると逃げる仕組みの猫だから、知らん振りの鼻歌でそっと近寄る。

「そんな転がってるポーちゃんには、別に興味は無いの。
私は、花壇のお花を手入れしに出てきただけなのよ〜。」


女優はそんなシチュエーションを心に描きながら、ポーちゃんのそばにしゃがみこむ。
「あらぁ、芽が出てきたわねぇ。蕾もホラッ・・・・・。」

そんなコトを言いながら、ポーちゃんの隙を窺う。
すっかりベテラン女優の名演技に騙され、油断して毛づくろいなんぞを始めたポーちゃんの首っ玉を、「今だっ!」
迷わず、ムンズッッ!と掴み、抱え込んでゲット。

首の後ろの皮を掴まれると、とたんに仔猫の気分になって観念しちゃう猫。
他の兄弟がわらわらと集まってきて、「どうだった〜?」「どこまで行った〜?」と訊ねてる。

かくしてポーちゃんの脱走は、とってもプチな修行で事なきを得たのだった。
メデタシ!(^-^)v ブィ!
おぉ〜さぶかった。

※次回の更新は3月9日(木)です。お楽しみに。