Vol.93

夏の朝遊び

梅雨が明けたと思ったとたん、やってきました激しい夏が。
ギラギラ照りつける太陽の下で遊ぶには、海しかないでしょ〜?ってコトで、この夏はサーフィンに挑戦だ!

サーフィンやってみたい!という姪っ子が、夏休みを利用して我が家に合宿に来た。
私もサーフィンは2回くらいしかやったことがないので、教えるコトができない。
そこで、地元の遊びの達人に御指導をお願いした。

朝の9時から夕方の5時までは、海水浴の時間なので、サーフィンは禁止されている。
そうなるとサーファーは、超・早起きをして海に出るというコトになる。
そう、お日様が顔を出しさえすれば、朝はサーファーの海なのだ。

台風がこっちへ向っていると天気予報が伝え始めると、サーファー達は波チェックに余念がない。

「明日の朝、乗りましょう!」
伝説のサーファー師匠から電話がある。

「8時頃に行けばいい?7時かな?」
「あっれぇ〜、朝弱い?5時には波をチェックして、浜に居ますから。」

その晩、10時に我が家は真っ暗に消灯し、目覚まし時計は、4時にセットされた。

曇りの日が続いていて海水温が上がってないから、きっと早朝は水が冷たいハズ。
水着に、ウェットを着るか、ラッシュにボードショーツじゃ寒いかな?
ウェットは、シーガルにするか、スプリングがいいか?

慣れていないから、アレコレ迷い、姪っ子に試着させてみる。
初めての彼女は、ウェットを着るだけでもキャピキャピしていて嬉しそうだ。

台風が近づきつつある海には、早朝とは思えないほどの、たっくさんのサーファーが浮かんでた。

利き足の足首に、ボードの流れ止め、リーシュコードを巻き付ける。
ロングボードを抱えて海に入るだけでも、波によろけてなかなか前に進めない。

都会育ちの子は、プールで泳ぐのは得意でも、波があって深さが一定しない海にはほとんど入ったコトがなく、慣れていない。
ゲレンデスノボーと八甲田山の違いみたいなものだ。

足に触るワカメにも、ギョっとする。
でもそれどころじゃない。
台風の影響で、波が高く、強いのだ。

ボードを持って、大きな波をジャンプして乗り越える練習をするが、波に対して直角にしておかなくちゃいけないボードが横を向いていたり、持つ場所が悪いと引っくり返される。

じゃぼじゃぼじゃぼ、ごぼ〜。
どっちが上か下か?水の中でもがきながら、それでも足が立つトコだからなんとか顔を出すと、師匠の笑顔が見える。
つられて笑っていると、水に揉まれるのもなんだか楽しくなってくる。

ボードにまたがり、足で水をかいで波と直角を保つようにする。
沖を向いて、波の様子を見る。
あの波はでっかいから見送ろう〜、その次の波に乗ってみようかな〜。

岸の方に方向転換して、ボードに腹ばいになる。
「行くよっ!」
師匠がボードを押してくれる。

そのまま腹ばいでボディボードの如く、波に乗って岸へ運ばれる。
う〜ん、楽しいっっ!

ボードに乗る位置で、ひっくり返ったり、うまく乗れたり。
波の威力とスピードに合わせて、自分の位置を微妙に調整する。

自分でパドリングして波に乗ってみようともするが、波のスピードに追いつくのは難しい。
何度か波を越える練習と、パドリングの努力を繰り返すうち、波はさらに大きく強くなってきた。

少々恐怖を感じ始めた時、師匠は胸の前で×を出した。
「今日は、もうこれで止めにしましょう。波がさっきより高く、強くなってきたから。」

私たちレディースは満足して岸に上がった。
浜では、海の家のオジサンが掃除を始めてる。

これだけ遊んで充実した時間を過ごしたのに、時計はまだ朝の7時なのであった。
仕事に行く前の、一遊び。
早起きは三文の得なのだ。

「今日、病気になっちゃおうかな・・・。」

ここらでは滅多にない、あまりに良い波なので、あちこちで溜め息と共に、呟かれるセリフ。
後ろ髪を引かれながら、海を後にする社会人たちがそこにはいた。

夏の一日が始まろうとしていた。

「今日はお昼寝しちゃおう〜っと♪」
心に誓いながら、ニコニコと家路についた朝だった。