Vol.81

年を取るのも面白い?

子供の頃から、目だけは良かった。
検眼では、ず〜っと1.5か1.2と言われ続け、この世に見えないものは無いってくらい、視力にだけは自信があった。

20才の頃、友人が眼鏡の会社に就職し、遊びに行ったついでに検眼してもらったら、「目が良いから40才代で老眼になりますよ。」と言われてしまった。
そして、その予言どおり、ピント調節機能が衰え、目が悪くなってきた。

字がぼやけて、手元から離さないと読めない。
それも画数の多い漢字は、ただの黒い塊に見えて、なんていう字なのかまるで読めない。
洒落た色で書かれていたり、バックに模様があると、よく見えない。
頑張れば見える字でも、目が辛いのと、頭が面倒くさいのとで、読む気になれない。

どうしても読まなくちゃならない文書は、眼鏡を掛けないと頭に入らない。
字を書かなくちゃならない時にも、眼鏡をしないと、ちゃんと書けない。

取扱説明書というものは、昔から気合を入れないと読めなかったけど、今やほとんど読んだことがない。
絵だけ見て、気になるトコをぼんやり眺めるくらいがいいところ。

こんないい加減な使い始めをするモンだから、大抵の機械モノはその機能のすべては知られないまま・使われないまま。
モノを作る人は若い人だから、老眼になった人のことまで考えて作っては、いないンだろう〜ね。
もっと簡潔で見やすい説明書を作って欲しいと、悪くなった目・かったるくなった頭になって始めて思うワケ。

でも目が悪くなるということは、自然の成り行き。
きっと、年を取ると、細かい事は見なくていいンだ。
文字が見えなくなるということは、読まなくていいンだ。
難しい機械モノは、完全には使いこなさなくていいンだ。
ややこしい事柄は、かったるい頭で考えなくても、もういいンだ。

ぼんやり遠くの水平線でも眺めてみる。
夕焼けが綺麗だなァ。
明日もいいお天気になりそうだねぇ。
空の色がこんなにも綺麗なんて、あ〜感動!とか。
年を取ったらそんな生き方でいいってことになってるンだね〜、きっと。

鍛えて良くなる目なワケじゃなさそうだし、シミ・シワ・白髪の三拍子揃えて、体さえ動けばオンノジってコトでしょ〜。
犬連れて、3時間も散歩が出来れば、それで充分!?他に何を望みましょう〜。

ところが最近は、もっと不便な事態になってきた。
毎日なにかしら、捜し物をしているのだ。
財布、携帯、書類。
そして一番多いのが、家の鍵。

さあ、出かけましょと言う時に、玄関に立ちつくして、バッグを探っても探っても出てこないのが鍵。
履いた靴を「しょ〜がないなあ〜!」と、もう一度脱いで家に上がり、あちこちドタバタごそごそ。
昨日着てた服のポケット、昨日使ったバッグ、自分が置きそうなところまで、捜しまわる。

すぐに見つかれば出かけられるからまだいいけれど、家中捜し尽くしても見つからないときだって時々あるのだ。
出かけたいのに出かけられず、いくら捜したって出てこない。
一日中捜している時もある。

なんども同じところを捜して捜して捜しまくって、見つかるように念ずる。
するとあ〜ら不思議!いつのまにかどこからか、突然ひょっこり出現するのであ〜る。
なぁんども、そこ、捜したよっ!っていう当たり前の場所に、ずっとそこにあったかのように鎮座しているのである。
年を取ると、そういう不思議な能力が身に付くらしい。

しかし毎回それをやってる自分にも腹が立つ。
なんで決まったトコに置いとかないかなあ!?

だって、鍵を開けたその瞬間から、3匹のでっかい犬たちが待ってましたと玄関で歓迎してくれるので、どったんばったん毎回大騒ぎの帰宅なのだ。

夕飯のおかずが入ってるスーパーの袋に次々と顔を突っ込んで、「突撃・我が家の晩ご飯!」してくるヤツらをかわしながら、靴を脱ぎ、取られないウチにすばやく下駄箱にしまい、持っていかれないウチにすばやくスリッパを履き、足元に絡み付き行く手を邪魔する大型犬をどかしながら進むのだ。
だから手にした鍵は、まったくの無意識でどこかへポイッとやってしまうらしいのだ。

歩きながらも、ドキドキしながらアレックスがどんな悪戯していたかをすばやく確認。
粗相のワナに嵌らないよう、足元にも注意だし、暴れまくる犬達が自分のワナに嵌ってさらに被害を拡大させないよう、それも気をつけなければならない。

そんなことによく気を回すぶん、鍵の場所はトンと忘れるのである。
う〜ん、年を取ったら鍵は掛けなくてもいいってコトなのかな?
鍵を掛けてなくても、ドアを開けたら3個の鼻が出てくる家には、泥棒さんも入りたくないだろう。
ワナも多いし、チェックも厳しいし。

あ!でも鍵掛け犬のアレックスがいるから、鍵を持ってないと締め出されちゃうのだった。
やっぱ、首から紐でぶら下げて、鍵っ子オバサンになれば安心だ。
そういえば、母も生前、なんども鍵が見つからなくて困ってから、あらゆるバッグに家の鍵をつけ、紐で首からぶら下げていたっけ。

でもそれでも、首に下げて持っていくのを忘れるようになっちゃったら?
アレックスをしこんで、鍵を開けてくれる犬にするっきゃない!
もしくは、私が近づくと鍵が開くように、頭に発信機でも付けて、猫ドアみたいに家族だけ入れる装置の玄関にするのが便利かもしれない。

私の老化が進むより速く、是非そういうドアを開発していただきたい。

若いときには思いもつかなかったこんなこと、年を取るってぇ〜のも、なかなか面白い〜♪