Vol.57

ケ〜ンシ〜ン!

私のご先祖さまは、私が知ってる5人中3人がガンで亡くなってる。
もしガンが遺伝するのなら、私はかなりの確率でガンになりそうな血統だ。

生活習慣や環境が病気の原因になるンなら、自分で、ある程度は気をつける事ができる。
多少の努力で健康が得られるンなら、そりゃあ誰でも病気にならずに長生きしたいもの。
そして出来る事なら病まず寝込まず、ある朝、突然ぽっくりと逝きたい。

いくら気が若いったって、数えてみれば着実に年令を重ねた今の私。
自分でも知らないうちに、どっかにガタが来ててもおかしくないのだ。

美人薄命。
ホントならとっくに世を去らなけりゃいけないハズの私なンだけど、何故か!?まだまだ粘って生きている。

今まで検診ってものをまったくした事は無い。
市のガン検診にも行った事がない。
テレビで「重大な病気の前兆を見つけよう」とか言ってると、正座して見てしまう。
気になることは多々あるから、話を聞いてると自分も病気の気分になってくる。

そこで、年女記念!?と致しまして第一弾!今月は「ガン検診月間」と決めましたァ〜!
早期発見、早期治療っていうから、病気かも!?って思う前に、病院へ行って調べてもらお〜。
なんて優等生な私なンでしょ〜。

鎌倉で評判の良い病院を捜しだし、電話で人間ドッグについて尋ねてみた。
人間ドッグにはいろんな検査項目があって、コースによってお値段もかなりの金額になる。
それに予約が混んでいたらしく2〜3ヶ月待ちと言われてすぐにくじけ、単品のガン検診でとりあえずってことに決めてみた。

予約を入れた朝、緊張しつつ病院で受付を済ませ、予約時間前には受診する科の廊下の長いすに座っていた。
こうして病院に来るのは久しぶりだ。

母が大学病院に掛かっていた頃、私も毎回アッシーとして付き添って通っていた。
その頃の病院のシステムは、予約もせずに担当医の診察日に行って、朝、受付をしてから延々と待つのだった。
2時間待ちの5分診療と言うけれど、実際は3時間待つこともあるし、診察時間は5分もなかったと思う。
簡単な問診と簡単な診察だから、せいぜい長くて2分診療がいいトコだ。

それでも、手術を受けた大きな病院で診てもらっているという安心感から、言われるがままに毎月一緒に通っていた。
一人で待つよりは、そばに一緒にいておしゃべりをしてれば気が紛れる。
ようやく診察が終わっても、支払いを待つ、薬を待つ。
待つ、待つ、待つの連続でウンザリし、健康な私でさえ疲れを感じる病院通いだった。

そんなことを思い出しながら、私は廊下のイスに座り、一人で待つ時間は長いから、持ってきた単行本に集中することにした。
予約をしたわりには、その約束は無かったコトのように当たり前のような顔をして過ぎていく。
私が待つ場所を間違えてるのかな?受付の仕方が不十分だったのかな?と、だんだん不安になり、辺りを見回してみたりする。
そして昔と変わらず、この病院でも長い時間待つことになり、単行本の半分を読み終えた。

私はたぶん健康だ。
でも体の具合が悪いから病院に来ているという人が、ほとんどのハズだ。
周りでは咳をしている人、足を引きずっている人、車椅子に乗っている人、歩くのも座るのも大変だから立ったままの人もいる。
もしかしたらうつる病気の人もいるかもしれないし、体力の落ちてる人には病気がうつる可能性は大きいだろう。
そんな人たちが何時間も待つには、このシステムと待合所はとても快適とは言えそうに無い。

「○○さま、○○△△さまぁ〜!◇番へお入り下さいィ〜!!」
患者さんを呼び出す声が、ひっきりなしに廊下に響き渡る。
マイクを使っているからボリュームは大きいンだけど、面倒臭そうな早口と聞き取りにくい発音。
一人を呼ぶためなのに、全員に呼びかけているから騒々しいったらありゃしない。
みんなは「仕方ない」って諦めているのかもしれないけれど、もうちょっとスマートな方法を考えてもいいンじゃない?と想像してしまう。

居心地のいい待合室。
そこは大きな窓から日差しが入る静かな部屋で、落ち着けるアロマがほのかに香ってる。
座り心地の良い大きなイスに腰掛けると、一人づつヘッドフォンで好きな音楽が聴けたり映画やテレビも見ることができる。
飛行機の座席みたいにゲームもできたりして、飽きれば水槽に泳ぐ熱帯魚や、花瓶にいっぱいの綺麗な花を眺めていたりする。
診察の番が近づくと、綺麗な優しい女性の看護士さんか、イケメンで気のきく男性の看護士さんが、そっとそばに来てくれて、ホレボレ見とれてる患者さんを丁重に診察室へ案内してくれるぅ〜♪
そんな待合室があったら、待ってる間に、病気が治っちゃうかもしれないじゃない!?
あ、それじゃ病院は商売にならないってコト!?

患者の一人として、○○様〜って呼んで貰うのには、抵抗感は特にない。
どっちがお客でどっちが偉いとは思わないけど、人間同士、お互いを大切に思い「有難う」の気持ちで接するのが大事じゃないかと思うワケ。
具合が悪いって言う人には、優しく接してくれるのがウレシイ治療の一つになると思うのょ〜。

や〜っと呼ばれた私の名前。
体の気になる不調を言ったら、若いお医者さん、カルテの年齢欄をペンで突付きながら「この年令でしょ〜、そりゃあ、色々しょ〜がないですよォ〜」って診断を下した。

アンタもそのうち年とるのよォ〜、そんな曖昧な一言で納得する〜ぅ?
年寄りは具合が悪くても諦めろってコトなワケ〜?それじゃ医者はいらないじゃん!
アンタのその診断聞くために、そこの廊下で何時間待ったと思ってンのよォ〜!

そう言いたかった私は、ヘラヘラしながら
「あ〜そうですか、そうですよねぇ〜、はぁ〜良かったぁ、有難うございましたぁ〜」
と、診察室をあとにしたのであった。

検査結果は2〜3週間後に送られてくる。
今は、試験結果を待つ受験生の気分である。