Vol.39

ナッシュに相棒!?

老犬アリスが旅立ってからというもの、デカ犬ナッシュは一年しか一緒に過ごしてはいないのに、ワケもなく寂しそうにピィピィ独り言で鳴くようになった。
あんなに大きさが違っても、同じ犬族として仲間意識があったみたいだ。

まわりを見渡せば、渡る世間はトラ猫ばかり。
いつもドタバタ楽しそうに「ネコ族・大運動会」を開いているが、ナッシュは仲間に入れて貰えない。
つい参加して一緒に走ろうとすると、とたんに「フ〜ッッ!」っと怒られてしまう。
実につまらなさそうだ。
つまらない犬を絵に描くとこうなるという、見本のような顔をして寝ている。

ナッシュは、よその犬とお友達になるのが苦手。
なんせ自分が一番偉いと思ってるそうだから、それじゃ〜なかなか遊び相手は見つからない。
いいじゃん、それならそれで。人間と遊べば。

それでも、ナッシュのピィピィ鳴きは毎日続いた。
そんなある日、いつものとおり、犬の里親探しサイトを見ていたら、ビビッ!とくるコを見つけてしまった。
今回はこれでも5分くらいは考えた。
そして、運命が決めてくれるサ!とメールを出した。

すぐお返事が来た。
決まった。
ウチにだ!
うっそ〜!?まじで!?

今度のコも同じ犬種のメス。
保健所の翌日処分の檻から救い出された成犬だ。
写真を見て、運命の糸のようなものを勝手に感じてしまった。

ナッシュもお家が何度も変わってしまった不運なコだ。
きっと今度のコのことも、分かって仲良くしてくれるだろう。
期待が夢とごっちゃになってくる。

寂しいナッシュにとって、穏やかなメスがそばにいてくれればどんなにか楽しいだろう。
お互い避妊・去勢手術済みだから、子供が生まれることはないので、ナッシュの良き相棒・家族として迎えてあげたい。

何度かメールで話を進め、ドキドキワクワクな私は彼女を迎えに車を走らせた。
新しく買ったバリケンに、新しいコを入れ、ウチへ飛んで帰った。
そして家族が見守る中で、ナッシュとのご対面〜!

ウチの匂いを嗅ぐのに夢中で、彼女はナッシュには無関心。
ナッシュは、
「誰だァ〜!?オレんちへ勝手に入ってきた犬は〜!許さんぞォ〜!匂いチェックさせろ〜!?ワンワンワンだァ〜!」

あんまりナッシュが騒ぐので、彼女は鼻にシワ寄せて唸り声で威嚇。
それが凄い迫力で、狼を思わせるような怖さ。
一瞬たじろぐナッシュだが、なんせ自分が一番偉いンだから負けるハズがないと、ガウガウ戦ってみる。

負けた!?
ンなバカな!もう一度ガウガウ。
また負けた・・・。

それから毎日、顔を合わせるとガウガウしてみた。
どっちも自分が一番と思い込んでる2匹である。どっちも引かない。
そしていくら戦っても、ナッシュは勝てなかった。

そしてやっとナッシュにも分かったみたいだ。
ずっと離れたところへ行って、遠くから吠えている。
これがホントの負け犬の遠吠え〜。ウオンウオン!

散歩も一人で二匹一緒には行かれないので、別々に連れ出す。
ナッシュを連れて海岸へ行ったら、顔見知りの犬連れに合った。
昨日までは、自分が一番と思っていたけど、そうじゃなかったことを思い知らされたナッシュ。
よその犬たちに取り囲まれたけど、ジッと我慢していた。
こんなナッシュを見たのは初めてだった。
ナッシュにとっては、いいお勉強になったみたいだ。

ナッシュと彼女の相性は、今のところまだ良くない。
お互いの為には、他のご家庭に飼われた方が幸せなのだろうか。
今は、家の中と外に分けて飼い、二匹の心を見ている。

彼女の新しい名前をず〜っと考えているのに、ぜんぜんピンとくる名前が思い浮かばない。
これってご縁がないってことなんだろうか?
それとも、ナッシュと和解して、「ウチのコになる」とはっきり断言できるとき、いい名前がヒラメクんだろうか?

彼女の安住の我が家は、どこにあるンだろう。
笑顔で体を預けて甘えてくれるこのコが、とっても愛しい。
手探り状態のなか、まだお試し飼いは続いてる。