Vol.24

ディプシー修行に出る

引越しして、日々、荷物の片付けに追われ、私ともあろうモノが主婦してしまった!
毎日片付けなんてやりたかないが、入れ替わり立ち代り友達が覗きに来て、みな異口同音に

「どう?もう片付いた?」

と気楽に言うから仕方ない。少しはダンボールを減らさなきゃ〜と、首タオルで大汗かいて、家事してしまった。

私のウチに限って、

「綺麗に片付いた」

なんてことがあるわきゃ〜ない。みんな、なんでワカンナイかナ〜!?
そんなのは瞬間芸でしかアリエナイ。
家が狭くなろうが、広くなろうが、ケモノ達は抜け毛を巻き散らかすし、家族はモノを出しっぱなしにするし、私はため息をつきながらアキラメルしィ〜。

しかし、引越しって大変だけど面白い。
へんなモンが無くなるが、面白いモンが発見される。
今回、引越し当日の朝まで使ってた歯ブラシが見つかんない。
すぐ出てくるだろうと、あっちこっちのダンボールを次々開けて片付けたが、出てこない。
一ヶ月経ったけど、まだ発見されず。諦めて新しいのを買ったけど、とっても不思議だ。

その代わり、中学生の時の作文とか、本人はすっかり忘れてて自分が何故そこに写ってるのか解らないような古い写真とか、まあ、片づけが進まなくなるようなお宝が続々と発見された。面白くって、取り合えず荷物掻き分け座り込んで、眺め、読みふける。

数日間は、片付けを理由に食事も作らず、デリバリーやテイクアウトを買ってきて過ごしたが、家族はだんだん文句を言い始める。彼らはまずは自室を片付けちゃって、もうちゃっかり新生活を楽しんでる。私は、まずは台所やお風呂場等、みんなで使う所からと頑張ってるのにィ〜、ズルイ。そして、もう外食は飽きたとか、ウチで作ったメシが喰いたいだとか勝手なこと言い出す。あ〜めんどくさ〜。

しょうがないから、まだ地理がよく解らない近所を散策しながら買い物に出た。
今度の住まいは、いざ鎌倉だ。キョロキョロしながら見て歩く。落ち着いたらいろんな所を探検しよう〜♪
今日のところは、とにかく簡単に作れて、でも作ったぞと言えそうなメニューを買い込み、家へ帰る。

気のせいか猫の数が少ない。外のナッシュが何かはしゃいで追っかけてる。

ん!?まさか?

薄暗くなった外と、窓を見ると・・・。

私でも背伸びしないと届かないような窓が開いてる。

なにっっ!?

お隣との境のブロック塀の上に、猫。

慌ててサンダルつっかけて飛び出すと、ブロック塀の上から、ラーラにニャアと言われた。

「ええ〜!アンタどうして出ちゃったのォ〜?早くおウチに入りなさいっ!」

続けてポーが入ってくる。

「ポーすけ、お前も出ちゃったのォ〜?ダメでしょ〜。」

引越しを機に、猫達の室内飼いを決意したので、外へ出さないようにするつもりなのだ。
でも外の楽しさを知ってる猫達なだけに、うまくいくか不安だったけど、やっぱりダメかな〜?

ウチの中で点呼とってみると、やはりティンキーウィンキーとディプシーがいない。4兄弟で探検に出たのだ。心配しながら待つと、夜寝る頃、「ただいまァ〜」と、ティンキーは帰ってきた。でもディプシーは帰ってこない。
一番喰意地が張ってて、最初から最後まで食べてるようなコなのに、食事時にも帰ってこない。
デブだしィ〜と家族に呼ばれてるコだけど、食べずにいられるワケがない。

近所を名前呼びながら捜しまわり、日に何度も窓を開けて名前を呼んだが、数日経っても帰ってこなかった。姿もまったく見せない日々。毎日窓を開けたまま、帰りを待ったがダメだった。

もっと積極的に捜せば良かったのかな。保健所にも聞けば良かった。張り紙を作って、早くに貼り出せば良かった。自分で捜したってそうそううまく見つかるモンじゃないのかな。すぐ帰ってくるかと考えが甘かった。

そんなある日、隣の空き地に黒白の猫ちゃんがいた。最初、鳴き声だけがしたので、ディプシーかと思い、近づいていったら違った。そこでそのコにお話しした。

「ウチのディプシーってコが迷子になってるの。もし、見かけたらウチへ帰るように言ってくれる?」

その頃、近所の猫好きのご夫婦と立ち話をする機会があり、猫がいなくなったというと、とても心配して下さった。猫の集まる場所を教えて下さったり、特徴を聞いて見つけたら知らせるとも言って下さった。有り難い。

ディプシーは、最強の戦士と謳われ、ウデに自信有り!だから、新しい土地で新しく縄張りを作ろうとしてるのかもしれない。この辺りは猫が多いし、道路から少し離れているから滅多に車も入って来ない。猫にとっては住みやすい土地かもしれない。猫好きも多そうだ。

きっとどっかで美味しいご飯をご馳走になってるンだろう。
顔は可愛くなくてふてぶてしいンだけど、誰かが可愛いと思ってくれることを祈りたい。
そして、きっと修行の旅に出たンだと思いたい。
強いフォースを身に付けて、ある日、ひょっこり戻ってくることを信じて。