Vol.7

空き巣にご用心

一日中出かけていて、スーパーの買い物袋を両手にヒーヒー言いながら家に辿り着いた。

まだ誰も帰っていないみたい。薄暗くなった夕刻、電気もついていない我が家。

いつものようにポストの中をごそごそさぐり、夕刊と郵便、そして玄関のカギを探す。

ない・・。夕刊と郵便はある。カギがない。玄関はカギが掛かっている。ピンポンしても誰も出てこない。犬や猫が集まってくる。犬は玄関まで出てきて中からフガフガ匂いを嗅いでいる。猫たちは中も外も集合済みで、締め出し状態の私を黙って眺めてる。

携帯で一番最後に出掛けたと思われる家族に聞く。

「ウチのカギないんだけど〜。」

「え〜?あっ!持って来ちゃったァ〜。アハハァ。」

「どーすんのよ、私カギ持ってないよー。」

「窓から入ればー?オレの部屋の窓、カギ掛けてないしィー。」

「えー!?なにそれ?まじィ〜!?」

うっそぉー?と思いながらも窓に手を掛ける。開く!なんてウチだァ!

ポストにカギを入れて置くだけでも充分不用心なのに、ご丁寧にも窓のカギまで開けてある。どうぞお入りくださいってなモンだ。

とにかく買ってきたサンマも気になるし、ご飯も炊かなくちゃならない。薄暗くなった今、猫たちに見守られながら玄関先で夕刊読んでるわけにもいかない。と、なれば実行するっきゃない。

良からぬ事を企む不審な動きの私は、自分んちの玄関先でオドオドと辺りの様子を伺った。もちろん猫以外の目撃者はいない。よし、今だ!意を決して窓によじ登る。見守る猫たちは「おぉ〜!?」っと驚く。こんなとき身軽でオテンバなおばさんで良かったと思う。まだまだイケル。

ソソクサと靴を手に玄関に回り、外の買い物袋を取り込みながら、再び外に目撃者がいないことを確認する。OK、完全犯罪だ!

しかし夕食の仕度をしながら考えた。町内会の集まりでは、最近の犯罪増加を言っていた。お向かいの新しいお家にはセコムのシールが張ってある。網入りガラスでも破られる時代だそうだ。ウチはそんなガラスさえ使っていない。いやそれ以前の問題だ。カギは見えるトコに置いてあるし、気づかない泥棒の為には窓のカギまで開けてある。ひどいときには誰かいるだろうと、カギさえ掛けずに出かけるモノもいる。猫が玄関を開けて遊びに出かけ、文字通り開けっ放しのウチっていうことさえある。猫に閉めることも教えとかなきゃいかんカナ〜?。

よくこんな状態で泥棒に入られずにいると感心する。犬シールを貼ってあるからか?

イヤイヤ、ウチの犬は誰でも大歓迎の犬で、例え泥棒でもウェルカム状態だと思う。吠えることは忘れて久しい。人を噛んだ事はないし、万が一噛んだとしても歯がほとんどない。おまけに年とって耳が遠いから、ずっと気づかずに寝ているだろう。変な服着て新生児用パンパース付けてる犬が出てきても、泥棒も笑っちゃうだろう。

その点、猫は違う。みんなすぐに集まってきて、そこらじゅうからジイーっと見ている。6匹もの猫たちに見られているといい感じではないので、ちょっと戸惑うが、そんな無言の圧力にメゲる繊細な泥棒もいないだろう。番猫には、なってるが攻撃性と吠えることがないのが玉に瑕ではある。これも訓練してみるか?

運がいいのかとも思うが、実は違う。理由は一つ、家がオンボロだからである。

近所の小高い丘に登って景色を眺め、ついでに自分ちを見ると近所でイチニを争う古さをかもし出している事に気づく。ポストには毎日のように、新築そっくりさんとか、リフォームはぜひ当店へとか、屋根の吹き替え時期ですとか、チラシ広告が入っている。

やはり!これで泥棒も避けて通るワケだ。呼んでも無視されるンだろう。たとえ中に入って見たとしても、捜し物は諦めるだろう。アマチュアには見つかりっこないのが、我が家のお宝である。

防犯対策バッチリ♪というワケである。

みなさんもオンボロそっくりさんにリフォームしましょう!年末に向けて効果バツグンですよー。