Vol.4

ジャングルハウス

我が家は、犬が1匹・ネコが6匹、同居している。
(人間の方が頭カズでは負けているので、同居させてもらっているような状態ではある。)
息子が小学生の時、授業で公園へ秋の実拾いに行き、ごみ箱に捨てられていたビニール袋の中から子ネコを拾ってきた。(ナニを拾いに行ったンだ?)欲しい子全員にじゃんけんで勝ったと得意げに。

12年間一緒に暮らしたその三毛ネコが年老いてきたころ、隣の空き家の庭で生まれたてのちゃとらんがピーピー鳴いていた。先住ネコはどうしても他ネコを受け入れられない性格で、お人よしの老犬アリスが母ネコ代理を申し出た。仔猫のたっくん(本名タックル)は犬を母と慕い、すくすくドラネコへと成長していった。もちろん名前の由来どおり、歩いてる人間へのタックルは足首を狙ったいい仕事である。老ネコは、しばらくして天寿を全うした。

犬、ネコ一匹づつの平和は、また2ヶ月で破られた。
ベイサイド・マリーナに買い物に出かけた去年の7月、妬け付くような暑い歩道のわずかな木陰に、行き倒れ寸前のちゃとらんが待っていた。子猫が少し育ったくらいのメスだったので、たっくんともうまくやっていけるだろうと、我が家へ。出会った場所からマリンと命名。

あんまり痩せていたので好きなだけ食べさせていて、一ヶ月が経った。少し太ってお腹大きくなったなァとは思ったが、まさか・・・!?と動物病院へ。

「あと一週間か10日で生まれますねぇ。3匹は入ってますね〜。」

にわかに我が家は見習いお産婆さんと化し、妊娠と出産の心得を熟読。
お産箱を準備し、日々、

「ここで安心して産むんだよ〜。」

と言い聞かせる。

ネコの妊娠期間は2ヶ月だそうで、ウチに来て一ヶ月。たっくんは手術済みでおかまになっている。お父さんネコはどんなネコ?どんな仔ネコが生まれてくるの?

そんな不安をよそに、マリンは無事4匹の子宝に恵まれたのでした。

長女 キジトラ ラーラ 器量良し 体は小さいが気の強さはイチバン
長男 チャトラ ディプシー 健康優良児で最強の戦士 ネコなで声は、やたらソプラノ
次男 チャと白 ティンキーウィンキー ハンサム 靴下専門の気弱なハンター
三男 チャトラ ポー カレだけシッポが短い 掃除機大好き おしゃべりネコ

この名前は、テレタビーズというテレビの幼児番組のキャラクター。
かくして、たっくんは身に覚えのない子ネコ達の父ネコとなるが、もともと精神年齢が幼かったので、兄弟のようなつもりでいる。
マリンは、顔はブサイクなのだが実に母性本能が強く、熱心に子育てした。
小さな体でせっせと母乳を飲ませ、その栄養補給の為か、外へ行ってはセミやヤモリを捕まえ、デザートにしていた。今まで野生ネコだったから、新鮮な味を忘れられないのだろうと思っていた。

そして仔猫が育ち、外遊びをするようになったら、大変なことになった。全ネコ、狩人なのだ。
遠くの方からセミのウルサイ鳴き声が近付いてきて、やがて泣き叫ぶセミをくわえた得意げなネコが現れる。それが入れ替わり立ち代り、一日何度も繰り返される。静かに来たと思っていると鳴かないヤモリ。やけに真剣に4匹で取り囲んでいると覗けば、とぐろを巻いたヤツのこともあった。スズメは飛び回り、モスラのように巨大な蛾が壁に張り付いている。死んだフリを決めてるでっかいクモや、りっぱなバッタ。アブラゼミが台所を飛び回り、昨夜の天ぷら油の中におっこちて、本物のアブラゼミになった事もあった。鳩も持ち込まれたし、黄緑色のヒナは3羽運ばれた。老犬アリスも、何?何?と顔をつっこんで、セミに攻撃を受け、怒ったついでに食べちゃった事もある。

騒ぎの度に人間は獲物を隠して取り上げ、外へ逃がすので、たいがいの事には驚かなくなった。ここは横浜の中心街ながらで、チベットである。こんなに自然がいっぱいあるとは、この夏まで知らなかったのであった。いまはもう秋。セミが終わりトンボに変わった。